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# 民泊 # 不動産

「違法民泊」に独りで泊り続けた女子の想像を絶する経験

日本全国に広がる「闇の世界」

違法民泊に入室するたび、必ずやってしまうこと

私は、昨年の7月から12月にかけ、思い立って国内の違法民泊に60泊ほど泊まった。

当時は「民泊」という言葉が騒がれ始める少し前で、不動産の賃貸市場に関する業界紙に勤務し、全国を飛び回っていた私が「出張のたびに民泊に泊まっている」と話すと随分と珍しがられた。「中国人旅行者でもそんなに泊まってないよ」と笑われたが、自他共に認める「民パッカー」だった。

そんな私が、ある頃から、民泊に泊まるたびに入室後すぐ、行うようになったことがある。「誰かが潜んでいないかチェック」だ。

 

風呂、押入れ、トイレと、人が隠れられるような場所を、恐る恐る見て回る。とくにベッドの下を覗く時は、心臓がばくばくと波打つ。宿泊施設でありながら、「安心感や快適性」とは程遠い場所。それが、違法民泊だ。

なぜ、こんなチェックを行うようになったのかというと、民泊における「鍵」の管理の実態を知ったからだ。

「民泊特区」として知られる東京・大田区で泊まった民泊の鍵は、無施錠の郵便受けの中で、大量の投げ込みチラシに埋もれていた。

[写真]この違法民泊の鍵は無施錠のポストの中で、大量のチラシに埋もれていた(写真提供:吉松こころ)この違法民泊の鍵は無施錠のポストの中で、大量のチラシに埋もれていた(写真提供:吉松こころ)

大阪市の民泊も同様で、郵便受けの側面にぺらぺらのセロハンテープで貼り付けられていた。

京都駅徒歩1分の民泊では、鍵は「暗証番号付きキーボックスに入っている」とのホスト(貸主)からのメールに安堵して現地へ向かったのだが、いざ番号を合わせようとしたら、既にその番号になっていた。ゲストが変わる度に暗証番号を変えるという発想がないことが見て取れた。

江東区で泊まった民泊に至っては、玄関ドアにキーが差し込んだままになっていた。

すぐさまiPhoneで写真を撮り、ホストに「こんなことになっていますけど」とメッセージを送った。返事は、「あ、ごめーん。刺したままだった〜」だった。

そして、どの部屋も、ひとたび鍵のありかを知った人間が、その鍵を持って鍵屋さんに行けば、ものの10分足らずでコピーが出来上がるような状態だった。

つまり、1回泊まっただけの私でも、いつでもこれらの部屋に入れるようになってしまうのだ。

誰でも入れる部屋――。そんな場所で寝泊まりすることには、恐怖しか感じない。そうでなくとも、民泊を舞台にした事件はすでに発生しており、逮捕者も出ている。

2017年7月、福岡・天神で、大家に黙って民泊経営をしていた34歳の男が、泊まっていた30代の女性2人組ゲストのうち、1人をベッドに押し付け暴行したとして準強制性交等罪で逮捕されたのだ。

逮捕された男には覗きの前科があり、犯人をよく知る知人からは、初めから「レイプ目的の民泊経営だった」という証言まで飛び出している。

実は、この物件は賃貸で犯人が借りていたものだ。家賃は4万円。それを、1泊1万円で貸していたというのだから、4泊でもとが取れてしまう。逮捕された男の性癖を考えれば、盗撮や盗聴の可能性もあったかもしれない。

「じんましん部屋」の恐怖

違法民泊に泊まって、じんましんが出たこともあった。大田区内の、ある民泊に泊まった翌朝のことだ。

大田区は国家戦略特区である。羽田空港に近いこともあり、民泊ニーズは高い。旅行者とホストをつなぐ仲介サイト「Airbnb」で「大田区」を検索すると、300件を超える部屋がヒットする(平成29年12月11日現在)。

しかし大田区のホームページの「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区民泊)認定施設一覧」に掲載された物件は、平成29年11月22日現在で48件のみ。

特区内とはいえ民泊のほとんどが、「違法」「闇」「ブラック」「無許可」といった類のものなのだ。

その「じんましん部屋」は、中に入る前から驚きの連続だった。

外観は高級感のある賃貸マンションで、単身者が多く暮らしているように見えた。夜10時。エレベーターで8階まで上がり、外廊下の一番先にある部屋へそそくさと向かった。

途中、強烈な視線を感じ、ちらっと横を見ると、隣の部屋の玄関が少しだけ空いていて、中から二つの目が私を見ていた。

「やばい」

急いで鍵を差し込み、玄関ドアを小さく開け体を滑り込ませるように中に入ってすぐさまロックした。「入られたらどうしようかと思った」と思いながら、電気のスイッチをパチパチ押すが、つかない。

瞬間、誰かが潜んでいるのではないかとパニックになった。外にも出られない。何度もスイッチを押したが真っ暗なまま。

泣きそうになりながらiPhoneの懐中電灯機能を使って室内を照らし、恐怖でガタガタと震えながら他の電灯のスイッチを探した。しかしどれもつかず。結局、生まれて初めて入った部屋で、ブレーカーを探しまくって電源を入れるという、想像を絶する経験をした。