また冒頭陳述で弁護人は「殺意は強固であるとは言えない」という謎主張を繰り出していた。とはいえ完全犯罪を目論んでいたことは分かる。検察官はそこを突っ込むが、還暦以降の被告人の鉄板ワード『分からない』を山田は使いまくった。
検察官「なぜ犯行時に英語でしゃべったの?」
山田「わかりません」
検察官「目出し帽をかぶったのはなぜ?」
山田「わからないです」
検察官「子供用の靴はどこで買った?」
山田「わからないです」
宮川さんの勤務態度の悪さという相手の非はよく覚えているのに、都合の良い時に「分からなく」なるのがアウト老である。
〝犯行時は健康だったのに公判時に体調不良を訴える〟のもアウト老にとっては日常茶飯事。「足が痛い」と被告人質問で訴えて老いをアピールするが、質問後はスッと立ち上がりキビキビと長椅子まで移動する。
さらには事件当時、小刀で相手を刺して殺害し、そこから骨董品を多数盗んだアウト老、櫻井正男(逮捕当時66)に至っては、公判時には車椅子で登場。「事件の5年前に脳梗塞を起こし左半身麻痺が残る」と冒頭陳述で語られたが、左手で顔をボリボリと掻いていた。それより何より、犯行時の防犯カメラの映像には普通に歩いている様子が映っていた。このように〝犯行時に体力勝負な犯行を犯したにもかかわらず車椅子〟なアウト老もひとりではない。
車椅子アウト老は特に法廷での言動が奔放で、途中で眠ってしまったりもする。しかも証拠の読み上げ中などではなく、自分に質問されている最中に眠ってしまうので、法廷の皆が「死んだのか!?」とヒヤヒヤしてしまうことになる。
彼らにはある程度、共通点がある。まずはプライドが高いこと。山田のように完全犯罪をもくろむアウト老は他にもいる。自分ならば完全犯罪を成し遂げられると信じている。また山田は「私がミヤさんを葬ってあげなきゃと思った」と法廷で語っているが、我こそが他人の運命を決めることができるのだという思い上がりを見せるアウト老も、珍しくはない。
集落のほぼ全員の住民たちに嫌がらせをしてきたモンスター隣人を足払いで転ばせ、排水のため池に頭を押し付け殺害した植木亨(逮捕当時76)も「これ以上皆に迷惑をかけないことが第一」と、集落の平和のために自分が手を下したのだ、という意味のことを言った。ちなみに隣人トラブルからアウト老化するパターンを法廷で見かけたのは一度だけではない。他にもいくつかある共通項を『アウト老度チェック』としてまとめたので参考にしてほしい。筆者はかなり当てはまるので還暦近くから注意していきたい。
☆アウト老度チェック☆
・還暦を過ぎた
・許せない奴がいる
・羽振りの良い時期があった
・最近、金や不動産を失った
・自分はもっと評価されるべき人間だと思っている
・隣人が許せない
・おそろしい隣人がいる
・完全犯罪を犯すことなど造作もない
・かっこいい自分を見せたい相手がいる
・ある人間に騙されたことが忘れられない
・現役世代に負けない体力がある
・介護殺人や貧困からの窃盗など自分とは無縁だ
10以上=もはやアウト老
8以上=アウト老寸前
5以上=アウト老予備軍
4以下=アウト老には程遠い