あなたの身近にも必ずいる「アウト老」(アウトロー)にご注意を!

耳が遠いフリ等「老人力」遺憾なく発揮
高橋 ユキ プロフィール

法廷で殺した相手をディスりまくる

宮川さんを殺害するため、外国人強盗を装って自分の経営しているコンビニに押し入った山田は、本部の人間から聞いていたという「最近では防犯カメラの映像から身長が分かる」という知識を活かし、長靴の中に子供用の靴を入れ、シークレットブーツの要領で背を高くしていた。犯行時の天気予報は雨。最も客が少ない〝雨の平日深夜〟に決行したはずだったが実際この日、雨は降らず持ちこたえていた。

おそらく完全犯罪を狙っていたのだろう。犯行直後の3時から、宮川さんと交代する形で、山田がシフトに入る予定だった。そこで〝何も知らずに勤務時間に出勤した店長〟を装うつもりだったのだ。

ところが宮川さんとの死闘直後で興奮状態にあったのか、自分も傷を負っていたことや、返り血と自分の血で、着ていた服が血まみれだったことにも山田は気づいていなかった。警察官にとっては、「一見して何かヤバいことをやった」と思しき男が店の前にいた状態である。一体何がしたかったのか……。

 

翌年に横浜地裁で開かれた裁判員裁判の冒頭陳述でこうした事件の概要が明かされるとともに、山田の犯行の動機も語られた。山田はもともと若い頃、コンビニを経営していた宮川さんの店で研修を受けたのち、独立していた。長い付き合いの同業者の友人という間柄だ。事件数年前、宮川さんのコンビニが閉店し、山田のコンビニで勤務することに。だが、その勤務態度は山田から見てこんな様子だったという。

「正直、宮川さんはダメでした。自分が経営者だったから、バイトと同じ仕事ができるかと思ってたのか、他の従業員からクレームが入るようになりました。自分に直接言ってきた人はいなくて、かみさんを通してくる場合が多かったです。

もう、動かないんですね、レジの前から動かない。全部の仕事が終わってレジにいるんだったら分かるんですけど、宮川さんは仕事を残してレジの前にいるんです。評判は良くなかったです。何回か注意したんですけど、モグラ叩きのようにあっちが悪くなるし、もっとしっかりやってくれないと迷惑するからやってくれと言いました」

と、殺した相手の勤務態度を、遺族もいる法廷でペラペラと語る。よほど気に入らなかったのだろう。だが勤務態度だけで殺害するのか? 

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と思いきや、ふたりには金に絡むトラブルがあった。山田の経営しているコンビニの母体が変わったことで一部戻ってきた保証金を宮川さんに預け、株式投資を頼んだところ、宮川さんはわずか数年でその殆どを溶かしてしまったのだ。しかも終盤は連絡が取れなくなり、山田が慣れないパソコンを使い取引を終わらせた。

「なんかほんとに腹がたちました。1200万円くらい損して、これはもう私がパソコンを預けて任せちゃってたのが失敗したと。なんで電話1本で取引のやり方おしえてくんなかったのかと、殺してやろうと思いました」

こう語る山田。自分で取引すれば良かったじゃないか、と法廷の誰もが思ったことだろう。