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あなたの身近にも必ずいる「アウト老」(アウトロー)にご注意を!

耳が遠いフリ等「老人力」遺憾なく発揮

「高齢者による犯罪」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。

経済的に追い詰められた末の万引き、長年の介護による疲れからの殺人など、〝やむにやまれぬ〟事情から犯罪に及んだと思いがちだ。だが、こうした例は高齢者犯罪の一側面でしかない。実は、驚くほどに身勝手な理由や思い込みから、凶悪犯罪に手を染める高齢者や、自身の不遇を憂いて他者を巻き込み暴発する高齢者たちがいるのだ。

私はそんな高齢の凶悪犯罪者たちを『アウト老(「アウトロー」と読む)』と勝手に命名し、彼らの裁判員裁判を傍聴してきた。アウト老たちはその犯行もド派手なものが多いが、法廷での言動も自由奔放なのだ。傍聴してきた感触から、すでに還暦近くでアウト老化するものたちもいる。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)に収めた事例の中から、アウト老たちの実態を紹介したい。

 

外国人強盗かと思いきや

神奈川県厚木市から相模原市へと続く国道沿いのコンビニで、従業員の宮川一宏さん(61=当時)が滅多刺しにされ殺害されたのは2015年11月24日。平日の深夜、このコンビニは最も暇な時間帯で、このときも客はいなかった。シフトに入っていたのは宮川さんだけ。そこに2時15分、雨合羽を着て長靴を履いた不審な〝客〟が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

そう宮川さんは声をかけたが、よく見ると〝客〟は目出し帽をかぶり、両手に手袋。右手には包丁を持っている。

「マネー、マネー、マネー」

〝客〟ではなく外国人強盗だ。宮川さんは売上金を渡し、難を逃れようとした。

「お金はそっちにあります、あります。そこに」

目出し帽の強盗は再び、「マネー、マネー、マネー」と叫ぶが、レジには向かわずなぜか宮川さんに向かって来る。そして、持っていた包丁で宮川さんの腹を刺した。

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ふたりは奥の調理室へなだれ込む。宮川さんは棚の中にある刃渡り18.8センチの出刃包丁を取り出して応戦するが、そこで繰り広げられた死闘に勝利したのは〝強盗〟だった。

「わかりました、お金はいっぱいあります、持ってって、持ってってください、持ってってください!」

店内の防犯カメラにはこう叫ぶ宮川さんを何度も刺す強盗が映っていた。

倒れた宮川さんを残し強盗が立ち去った直後、店内を訪れたトラック運転手が缶コーヒー2本と弁当を手にしてレジに向かったところで、血だらけの床やレジ、倒れた宮川さんにようやく気づき110番通報。警察官が臨場した。

しばらくして警察官が店外に出ると、近くに停まった車の中から、店を見ている男がいるのを発見する。

「ここで何をしているんですか」

警察官の問いに、男はなぜかおどおどしながら「何も」と答えたが、服の右襟には血の跡があり、右手を出血していた。「昨日調理して手を切った」などと話しているその男に警察官は怪しさを感じながら車内をよく見ると、助手席に血のついた出刃包丁が置かれている。

「刺しました。トラブルがあって、刺しました」

男は山田誠二(当時63)。なんとこのコンビニの経営者だった。