東大教授が「赤ちゃんが選んだ」と本当に言える絵本をつくってみた

大人の見方と真逆だった!?
開 一夫 プロフィール

赤ちゃんとお母さんの視点は異なる

赤ちゃんは「うるしー」という音声と最もマッチしているのは(1)のクマの絵だと判定したわけだ。

我々は、赤ちゃんのお母さんたちにも、どれの絵が一番ウルシーらしいの絵なのかを訊いてみた。結果は次の通りである。

グラフから分かる通り、お母さんがもっとも「うるしー」らしいと思ったのは、(2)の絵であった。

先の赤ちゃんの注視時間の結果と比較すると、興味深いことに、お母さんが選んだこの絵は、赤ちゃんにとってはもっともマッチしていない絵だったのである。

実際のところ、私も4枚の絵を最初にみたときには、(4)の絵が「うるしー」らしいと感じた。大人の視点と赤ちゃんの視点は異なることもあり得るのだ。

発達認知科学の目標は、大人の常識では理解できない子どもの世界を解明することである(「大人たちが絶対知らない『赤ちゃんのふしぎな能力』」)。そう考えれば、この結果は、驚くことではないのかもしれない。

これまで出版されている絵本の帯には、○○大学の△△教授のウンチクが書かれていることもあるが、はたしてどれほど赤ちゃんの視点に立ったものなのか怪しいものもある。

 

私たちは、『うるしー』以外にも、同様の方法を使って赤ちゃんに審査してもらい2冊の絵本『もいもい』と『モイモイとキーリー』を出版した。

赤ちゃんに審査員として参加してもらいながら「赤ちゃん向け」の製品を開発する方法は、絵本だけでなくベビー用品や玩具など様々な分野で活用の可能性がありそうだ。

今回は、赤ちゃんだけに審査員となってもらったが、お母さんと赤ちゃんが一緒に絵本の作製プロセスに関与してもらえるような方法も今後考えたい。

また、この実験は日本で行われたものである。別の言語が使われている外国では違った結果になるかもしれない。発達認知科学の研究者としての興味は尽きない。