日本人の「タミフル信仰」がいまだ根強いワケ

インフル流行期に知っておきたいこと
原田 隆之 プロフィール

タミフルは「真犯人」か

インフルエンザに話を戻そう。

問題になっているこれらの異常行動は、一見タミフルが犯人のように見えるかもしれないが、実はインフルエンザ自体が原因かもしれない。

インフルエンザの症状には、さまざまなものがあるが、一般的な発熱や倦怠感、関節痛などのほか、重症になるとインフルエンザ脳症と呼ばれる症状が起きることがある。

その症状は、突然奇声を上げて興奮状態になったり、走り回って外に飛び出したり、意味不明の言葉を口走ったりする。まさに、タミフルが原因だと巷で言われている症状と同じである。

とすると、タミフルが原因で異常行動が起こったのではなく、インフルエンザ自体が原因である可能性や、ほかに見えない第3、第4の原因があるかもしれない。

あるいは、これら単独では影響しないが、お互いに影響を及ぼし合って相乗効果のような形で影響しているかもしれない。

これらを慎重に検討しないと、因果関係はわからない。

つまり、印象や感情ではなく、冷静に医学的データ、エビデンスに基づいた判断をすることが必要である。

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厚生労働省データによる検証

まず、厚生労働省のデータを見ると、先述のとおり2015年から16年のシーズンで重い異常行動が見られたのは58人であった。その平均年齢は8.98歳、最も多いのは8歳。一方、18歳以上には見られなかった。

性別では、約3/4が男性である。最も多い症状は、「突然走り出す」というもので、1/3にこの症状が見られた。ほかには、「おびえ、パニック」「うわごと」「わめく」などが見られた。

もっとデータを拡大して、2010年から2013年までを累計すると、重い異常行動が見られたのは、100万人当たりの発症率に換算すると、タミフル3.0、リレンザ2.1、服用なし7.2となっている。

これでわかるのは、タミフルやリレンザを服用した人よりも、服用していない人のほうが、重い異常行動が有意に多いということだ。「有意に」というのは、データの誤差や偏りでこのような差が見られたのではないという意味である。

 

ほかにもさまざまなデータを検討した結果、厚生労働省の研究班は、「抗インフルエンザウィルス薬の種類、使用の有無と異常行動については、特定の関係に限られるものではない」と結論している。

とはいえ、死に至るような重大な異常行動も見られたことから、注意喚起の必要性も強調している。

これをより分かりやすい言葉で言うと、「明確な因果関係はわからないが、注意するに越したことはない」ということである。

したがって、特に若年層については、発熱後1〜2日目に異常行動が出る危険性が高いので、できるだけ目を離さない、1階で寝かせる、窓の施錠をするなどの予防措置を講じることを呼び掛けている。