NHK「受信料支払い拒否裁判」は時代錯誤も甚だしい

何のために地デジにしたのか…

2001年にデジタルデータ放送がスタートしてこのかた、市販の液晶テレビはコンピュータとしての機能を内蔵していて、インターネットに接続できるようになっている。

例えば現在、各家庭のテレビでは、WOWOWやスターチャンネルなどの有料チャンネルは契約を結ばないと映らない。真っ黒な画面に、「契約してください」というメッセージが出るだけだ。

しかし、実は放送データそのものはテレビまで送られてきている。業者の側で未契約の端末を識別し、通信をわざと撹乱する信号を流して、映らないようにしているのだ。専門的にはこれを「スクランブル」と呼ぶ。NHK-BSも、このスクランブルによって契約者の端末を判別している。

2012年4月以降、日本国内のNHKの番組は基本的に全てデジタルデータ放送となった。10年以上もかけて裁判をする暇があるのなら、その間に、受信料未払い者に対してスクランブルをかけ、NHKだけ映らなくすることも技術的にはできたはずだ。

例えば、「受信料の支払いと引き換えに、スクランブルを解くパスワードを発行する」というシステムを作るのは、そう難しいことではない。受信料を払え・払わないの押し問答も、それだけできれいさっぱり解消する。NHKにもそのくらいの知恵者はいるだろう。

 

パソコン・スマホも受信料請求の対象?

情報技術の変化を軸として今回の受信料問題を考えると、映像を含めた情報の取得・処理・発信プロセスがたどってきた民主化、自由化の軌跡に思いが至る。

メーカーディペンドのメインフレームが中心だった1970年代まで、「情報」とは特定の専門家が特殊な技術を使ってコントロールするのが当たり前のものだった。そのため、情報を取得する際の料金を、「素人」たる利用者から一方的かつ強制的に徴収することができた。

ところが、80年代に登場したパソコンが「誰でも情報発信できる時代」の幕を開け、90年代にはインターネットが情報の取得と発信をさらに民主化し、「誰でも」に加えて「どこでも」の時代になった。

2000年代に本格化した情報のデジタル化は、コンピュータ分野の枠内にとどまっていたIT技術が外部への侵食を始めたことを意味していた。

テレビもその例外ではなく、デジタル放送に移行したのち、従来のテレビの枠組みは急速に崩壊の危機にさらされることとなった。

インターネットのVOD(Video on Demand)、YouTube、Ustream、ニコニコ動画といった21世紀型動画サイトの登場。Netflix、Huluといった質の高い課金制動画配信サービスの台頭。これからの10年、映像配信サービスはいずれAI(Artificial Iintelligence)と結びつき、より密な双方向性を備えるようになるだろう。

テレビを視聴する機器の面でも、携帯電話向けのワンセグ放送が始まり、テレビチューナーを内蔵したパソコンが登場し、スマートフォンが数年間で急速に普及した。

20世紀のテレビはブラウン管方式で重く、居間の隅に固定するのが常識だった。それが21世紀に入って10年もしないうちにポータブルになったかと思いきや、今はポケットに入る大きさ・軽さだ。通勤電車の中でテレビを観る日が来るなど、誰も考えていなかった。

しかし現行の放送法とNHKは、こうした変化を考慮し採り入れることなく、いまだに半世紀前の認識にとどまっている。