山尾志桜里と高市早苗から考える、実は深い「夫婦別氏」問題

「戸籍」が話題になった1年を振り返る
井戸 まさえ プロフィール

「婚氏続称」という"鬼っ子"

さて、今年話題になった女性議員といえば、山尾志桜里衆議院議員だ。彼女は10代前半「菅野志桜里」の本名で、ミュージカル「アニー」の主役を務める子役女優であったのは周知のことであろう。

その後検事となり、衆議院議員へと転身した山尾氏は、初当選から今に至るまで「選択的夫婦別氏推進派」としてさまざまな場所でその姿勢を明確にしている。

「夫婦別氏」推進をはかる会合では、自身が一人っ子同士の婚姻で、婚姻時にどちらの氏にするのかが最も難題であったことを吐露した上で、このままでは婚姻できない人々が出るかもしれない、夫婦別氏制度導入は少子化の時代的要請であるなどと語っていた。

「山尾」は夫の姓を選択している。

あくまで仮定の話だが、もし彼女が今後離婚することがあったときに「菅野」に戻ることは、選挙的にはマイナスであろうことは想像がつく。

離婚をする以上、夫や妻の姓を名乗り続けるのは抵抗がある、もしくは自分の姓を分かれた妻や夫に名乗ってほしくない、いう人は多いだろうが、選挙を考えるとこのままの氏を継続したい……。

さて、こんな場合、「山尾」を名乗り続けることはできないのだろうか。

 

実は、可能なのである。婚姻時に選択した相手方の氏を使い続けることはできる。たとえどんなに元夫・元妻が抵抗しても、だ。それが「婚氏続称」である。

これはそもそも、離婚後、母親に引き取られることの多い子どもが、氏(姓)の変更によって子に不利益等を及ぼすことがないようにと設けられた制度である。

また、離婚した女性も同様に、一定期間使用した姓を変更することでの負担があるからこそ、継続的に使用する権利を認めているとも言える。となると婚姻前の氏をそのまま使用する「夫婦別氏」でも良いのではないか、となる。

「夫婦同氏」を主張する人にとっては「婚氏続称」はまさに「鬼っ子」とも言える。

〔PHOTO〕iStock

適応できない反対派のためにも?

こうしてみてきたように「夫婦同氏」は「伝統」でも、「家族の絆」を必ずしも担保するものでもないが、そこに価値を見て、名乗りたいという人々の意志は尊重したい。

人には誰しも「氏名権」があり、そこに当該個人に固有の人格的、財産的利益があることは自明である。

だからこそ「選択的夫婦別氏」の提案なのだ。強制ではないのだ。

そして、実は私が政治の世界にいて「選択的夫婦別氏」を実現しなければならないと思うのは、「夫婦別氏など絶対反対!」といっているいわゆる保守派の政治家と接する時なのである。

彼らは私のことを「オガタさん」と30年も前の旧姓で呼び続けている。「イドです」というと「そうそう」と言いながらも、また次に会うと「オガタさん」。

「別姓」に反対する人ほど、旧知の女性が婚姻により姓が変わっていることを知ってはいながらも適応できず、旧姓以外の新しい姓のインプット、上書きをすることができないのはなぜなのだろうか。いや、無意識のうちに「日本の伝統」を守っているということなのか。

いまだに旧姓で呼ばれる度に、彼らが混乱しないためにも、選択的夫婦別氏制度導入は必須だとさえ思うのだ。

「夫婦別姓」はかくにも深い話なのである。