山尾志桜里と高市早苗から考える、実は深い「夫婦別氏」問題

「戸籍」が話題になった1年を振り返る
井戸 まさえ プロフィール

「夫婦同氏」で結婚実感

「43歳の私にも、やっと奇特な「引き取り手」が現れ、この度、結婚致しました。(中略)
子どもの頃から夢見ていたような「運命的な出会い → 熱烈な恋愛 → 婚約 → 結婚式→ 新婚旅行 → 甘い新婚生活」といったパターンではなくて、短期間で話が進んでしまった上、結婚式も新婚旅行も同居も何時になるやら目途が立たない状況ですので、まだ結婚の実感もそれほど湧きませんが、昨日、婚姻届の受領証を夫から貰って、「高市早苗」から「山本早苗」に変わったんだなあ・・と、じわじわ嬉しくなってきているところであります。」(高市早苗HP 早苗コラム 大和の国より 2004年09月23日)

2004年、婚姻した直後の高市氏のコラムである。自分が予想していたような恋愛、さまざまな婚姻に至るまでのさまざまな儀式を経ずして婚姻することに対しては、戸惑っている様子も見受けられるが、彼女は「氏が変わる」ことで、婚姻の「実感」を得る。

これは高市氏に限らないことであろう。しかし、一方で「じわじわ嬉しく」感じるだけでなく、婚姻により従前とは違う氏で社会生活を送らなければならないことに、違和感を感じる人々も多い。

仕事を含め社会生活を送る上では、通称使用では対応しきれない不都合、不便がある。「選択的夫婦別氏制度」への要望はそうした中から生まれてきている。

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通称拡大だけでは不十分

さて、戸籍上は「夫婦同氏」となりながらも、社会生活では通称という名の別氏を使用している高市氏が、「選択的夫婦別氏」に対し強行に反対する理由はなんであろうか。

「これからの日本は、いっそう「家族の絆」を大切にしなければ、教育問題も高齢化問題も乗り切っていけないと思う。(中略)韓国は夫婦別姓だが、日本とは文化や歴史的事情がまったく違う。韓国は個人の出生を大事にする伝統が社会に定着しているので、女性は結婚しても自分の父親の姓を名乗り、死んだら実家の墓に入る。これに対し、日本では夫婦が同姓になって同じ墓に入る慣習が定着している。それに、今でも仕事場では通称名を使えるのだから、夫婦別姓までいかなくても日本の社会では問題がないのではないだろうか。」(「高市早苗のぶっとび永田町日記」(サンド ケー出版局・1995年) 

高市氏は「女性の権利を主張する政策だけにこだわりたくない」との小見出しがついた項で、このように主張する。20年前以上からの筋金入りの思いである。

 

反対理由は大きく三つ。「家族の絆」と「墓問題」、そして「慣習」「伝統」だ。祭祀継承に関しては、民法上の規定の問題でもあり「死後離婚」との絡みで別途書くが、高市氏が寺社の多い奈良を選挙区としていることとは無関係ではないであろう。

同書では、当時所属していた新進党の女性議員で「夫婦別氏」に反対をしたのが高市氏と扇千景氏だけだったが、扇氏がいてくれたことで「ホッとした」とも記している。

それでも高市氏には「そこまで言うなら、選挙でも山本を使用すべき」というような批判の声が、別氏賛成派、反対派双方から起った。

確かに、通称使用の拡大だけでは、どちらの意見も吸い上げられない側面がある。