がんと闘った平尾誠二と山中伸弥の『友情』「私はここで泣いた」

15万部突破。なにが惹きつけるのか
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入院中の平尾さんが「肉が喰いたい」というシーンがある。元気になるためには肉が必要だと。だが肉ががん細胞にも栄養を与えてしまうと考えた家族は「肉より野菜のほうがいい」とすすめる。

それに対して山中氏は、率直に「科学的根拠はありません。肉や魚もしっかり食べさせてください」と家族を説得した。

虫垂がんを克服したエッセイストの岸本葉子氏は、山中氏の気持ちをこう推察する。

「山中先生としては、家族の思い通りにさせてあげたほうがいいのか、それとも平尾さん本人の意思に任せるべきか、医師という立場と友達という立場があいまって、葛藤があったと思います。

でも腹を割って話して、平尾さんもご家族もそれを受け入れた。二人が固い信頼で結ばれていることを知っているからこそ、ご家族も納得できたのでしょう」

 

次代の若者たちへ

さらに岸本氏は「山中先生の『一緒に闘えて幸せです』という言葉が印象に残っている」と言う。

「平尾さんの奥様も『治療の面で後悔の念がないのは、山中先生のおかげです』とおっしゃっていました。それが非常に救いだったと思います。

もちろん、病に生を断たれることへの無念は尽きず、やり残したこともたくさんあると思いますが、そこに至るまでの選択に納得感があるのは、非常に大切です。山中先生のような人と巡り合い伴走者になってもらえたのは幸せだったと思います」

友情』では、二人の闘病だけでなく、日本の未来に対しても話が及んでいる。「次代を担う若い人たちへ」と題した山中氏との対談のなかで、平尾さんはこう語っている。

「僕、『体育会系は日本を滅ぼす』という論を持っていたんですが、今は逆に、そういう理不尽さも必要だと思うね。理不尽や不条理や矛盾を経験しないと、やっぱり人間は成長しないし、強くならないと思う」

前出の山下氏が言う。

「『スクール☆ウォーズ』は、友情や絆、勇気がテーマで作られました。現代の社会は、ますますそれらが希薄になっている。そのなかで二人は指導者たるものはどうすればいいか考えていた。

これからの日本をよくしたいという使命感を持っていた二人だからこそ、ここまで熱い絆が結ばれたのでしょう」

亡くなってもなお、二人の友情は続くだろう。男と男が、命を懸けて挑んだ闘いは私たちに多くのものを残してくれた。

「週刊現代」2017年12月16日号より

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