がんと闘った平尾誠二と山中伸弥の『友情』「私はここで泣いた」

15万部突破。なにが惹きつけるのか
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相手を信頼できる「器」

平尾さんのがんはすでにかなり進行しており、通常の治療を行うのは難しい状況だった。そこで山中先生が提案したのが、「免疫療法」だった。

前出の小西氏が続ける。

「僕もがんを経験しているので、平尾さんの気持ちは痛いほど分かりました。いま世の中にはがん治療に関する情報があふれていて、何を信じていいか分からない。だから患者はすごく不安になるんです。

そんなとき、山中先生は『自分の全力をかけます。だから僕の言うことを聞いてください』と伝えます。それに対して、平尾さんも『山中先生を信じるって決めたんや』と、最後まで信じ切った。

これには心が震えました。僕も手術前に担当の先生から『必ず助ける。信じてください』と言われて、すごく勇気づけられたので、二人の話を読んでいて胸が熱くなりました」

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平尾さんと山中氏は40歳を超えてから知り合った。大人になってから、ここまで心を通じ合わせる友人と出会える例はほとんどないだろう。

友情』を読んだフリーアナウンサーの堀尾正明氏が語る。

「40~50代の脂の乗り切ったサラリーマンの人たちにとって、男同士の付き合いは難しいと思うんですよ。どうしても仕事の駆け引きや利害関係が絡んでくる。でも二人の間にはそれがなかった」

掛け値なしの友情を築くためには、純粋に相手のことを好きになる必要がある。だがそれはそう簡単ではない。

平尾さんと同じ胆管がんを患ったジャーナリストの大谷昭宏氏が言う。

「私もここまで心を通じ合わせる友人とは出会ったことがありません。それはある意味、臆病だからです。そのため、友人にも全幅の信頼を寄せることができない。裏切られても許せる範囲のところで付き合っている。

しかし、彼ら二人は臆病ではなかった。お互いの間に線を引かなかった。自分が『この人だ』と、受け入れた相手を信頼できる器がある。ここが我々、凡庸な人間にはない部分だと思います」

 

二人とも一つのことを極めた超一流の人だから通じる部分もあったのだろう。だがお互いを信頼する一方で、二人は決して依存し合っていたわけではない。そこには単なる馴れ合いとは違う「大人の友情」があった。

平尾さんと日本代表でともにプレーした松尾雄治氏が語る。

「平尾は本のなかで『チームワークは単に助け合うことじゃない。個人がそれぞれの責任を果たすことが本当のチームワークだ』と語っています。

二人の関係はまさにそうでした。それぞれが相手のために自分にできるベストを尽くす。それこそが真の友情だと教えてくれました」

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