「来年1月、伊豆で大きな地震があるかもしれない」ある研究者の警告

経産官僚も注視している
藤 和彦 プロフィール

地球規模での研究が必要

そして角田氏がいま最も警戒しているのが、③MJルートに係る伊豆半島。角田氏は「MJルート上にある伊豆・相模地域で、近々大規模な直下型地震が発生する」と見ているのだ。

③MJルートには、実際に小笠原・伊豆諸島のほぼ直線で約1700キロメートル続く火山列島が存在している。過去にも南から順番に火山が噴火するか、地震が発生しており、これは熱エネルギーの北上に伴ったものと考えられる。角田氏は「MJルートには約40年間隔で大規模な熱エネルギーが移送されており、4年前に起こった西之島の大規模噴火はその一環だ」としている。

小笠原諸島の西之島(東京都小笠原村・伊豆半島の南約1000キロ)は13年11月に海底火山の噴火により誕生した新しい島と、73年に誕生した旧島とが、一年以上にわたる噴火活動によって一体化した。この噴火活動によって旧来の西之島は面積が約12倍にも膨らんでおり、この噴火規模は国内では過去100年間で4番目の大規模なものだった。

その後、14年10月に伊豆諸島の八丈島(東京都八丈町・伊豆半島の南約280キロ)の東方沖でマグニチュード5.9の地震が発生したが、この二つの噴火と地震から分かるように、その大規模な熱エネルギーは着実に北上しており、伊豆・相模地域に迫っていると考えられるのだ。

 

伊豆半島周辺では1978年に伊豆大島近海地震(マグニチュード7.0、死者・行方不明者26人)、1930年に北伊豆地震(マグニチュード7.3 死者・行方不明者272人)が発生しており、その間隔は約40年だ。特に北伊豆地震は震度7の激しい揺れを伴い地震断層が採掘中のトンネルをふさいでしまうほど大規模なものだった。その痕跡は東海道新幹線の熱海―三島両駅間を繋ぐ丹那トンネルにいまも見ることができる。

12年に発生した青ヶ島(伊豆半島の南約360キロ)の火山活動と、13年に発生した箱根の大涌谷の小規模な噴火との関連に注目した角田氏は、青ヶ島と箱根の間の直線距離が約320キロであり、両地点の活動時期のずれが約20カ月であったことから、当該地域での熱エネルギーの移送速度は「1カ月あたり約16キロ」と測定している。

この移送速度を元に、角田氏は「2013年11月の西之島の火山噴火がもたらした大規模な熱エネルギーは、来年1月にも伊豆・相模地域に到達する」としている。

なお角田氏は今年中ごろまでは伊豆大島の火山噴火を懸念していたが、最近、伊豆大島の西側に小規模地震が多発していることから、「伊豆半島またはその近海で大規模な地震が発生する可能性が高い」との見解に至ったということである。以上が角田氏の警鐘だ。

筆者は角田氏のこの研究は、地震予測を可能にする一つの見方を示したものであり、大変貴重なものだと考えている。ただし現在、この「熱移送説」の研究は角田氏個人でしか行われておらず、今の段階では、数百年の期間の中で限られた地域で発生した火山・地震活動を追跡した結果に過ぎない。今後、角田氏は「地球規模で実証を続けて行く必要がある」としているが、当然、角田氏だけの力では限界がある。

角田氏はこれまで一般向けの解説書として『地震の癖―いつ、どこで起って、どこを通るのか?』『首都圏大震災 その予測と減災』を出版し、熱移送説を説明している。また今回の伊豆半島を警戒する角田氏の発言や日本の地震研究の問題点については、角田氏と筆者との対談書である『次の震度7はどこか?』に分かりやすく示している。

繰り返しとなるが、予測に絶対はなく、角田氏の研究もまだ途上ではある。いたずらに危機感や恐怖をあおるつもりは毛頭ない。地震は起こらないほうがいいに決まっているし、筆者もそう願っている。

それでも、その可能性を指摘する学者がいるのだから、念のために注意しておこう……それぐらいの心持ちでも構わないので、伊豆半島の方々には、家庭で出来得る限りの備えをしておいてほしいと思っている。