ハッキリ言おう、行政はもう「地域活性化」に関わらないほうがいい

地域の未来を「守る」つもりなら
今井 照 プロフィール

東京圏の大学では80年代以降、東京圏出身者が増え続け、2000年代に入ると東京圏以外の出身者が減少に転じるのです。【図3】は東京圏の大学への入学者を、出身高校の地域別に集計したものです。70年代は東京圏・非東京圏出身の割合がほぼ半々だったのに、いまでは東京圏の大学に入学する者の約7割が東京圏の高校出身になっています。

もちろん、このこと自体が大きな問題なのではありません。【図3】はつまり、東京圏出身者が大学時代に地方出身者と接触する度合いが減ったことを示しているのですが、そのことが教育上、あるいは人格形成上、どの程度の影響を及ぼすかまではわからない。

また、国家公務員総合職に合格して国の政策づくりにコミットする人たちに、東京圏出身者が増えることになると思われますが、そのことで国の立案する地域政策が劣化するとまでは言えません。ただし、直感的にはそういうことがあってもおかしくないと思います。

 

大学進学率の地域間格差

それよりもはっきりとわかる大きな問題があります。それは、地方圏の高校生が東京圏の大学に入りたくても入りにくい現状があるということです。

【図4】は、地域圏別に見た大学進学率の推移です。東京圏と非東京圏の区別はこれまでの図と同じですが、新たに、東京圏と名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)、関西圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)以外の都道府県を指す「非大都市圏」を加えました。

1990年代まで、地域圏別の大学進学率には大きな差がありません。それが2000年代に入るとどんどん開いてきます。2010年代には、東京圏と非大都市圏との差が10ポイントを超えます。このことをどう考えたらいいのか。

東京圏と非大都市圏とのあいだに、大きな学力の差があるとは思えない。全国学力テストの正答率を見ても、むしろ地方圏のほうが高い科目もあるくらいです。たまたま生まれ育った地域によって大学進学の機会が異なるとしたら、それは個々の高校生にとって大きな壁になるし、日本全体にとっても有為な人材を活用できないという意味で、大きな損失になることは間違いありません。

地域によって大学進学率に差がある理由として、容易に想像できるのは収入の差です。地域ごとの収入を説明する統計として、1人当たりの雇用者報酬がよく使われるので、その推移を【図5】で見てみましょう(雇用者報酬の推計方法は全国一律ではなく、年度によっても変化するので、厳密に正確な推移を表しているものではありません)。

関東地方や近畿地方が相対的に高く、その他の地域はほぼ似たようなカーブを描いている。北海道・東北や九州と比べて、関東や近畿は2割程度、雇用者報酬が高いのがわかります。関東から東京都だけを切り出してみると、非大都市圏の各地方と比べて3割以上も高い。

これらの図からわかることを端的にまとめると、次のように言えるでしょう。

2000年代に入ってから、東京圏の高校生と非大都市圏の高校生とのあいだで大学進学率の差が広がり始め、それが固定化された。その結果、いまや非大都市圏の高校生は東京圏の大学に進学しづらい環境になっている。そうした事態にもかかわらず、国は非大都市圏の高校生が東京圏の大学に進学するのを阻害する政策を強化している、と。

その象徴が、これから2年間、東京23区内での大学の新増設を原則認めないという政策です。これでは機会の格差がますます広がることになり、結果的に地域の衰退を促進することになる。問題の所在や構造を見誤った国の政策が、まったくの逆効果を生み出しているのです。