2017.12.12

「熟成肉」が美味いとは限らない、牛肉の「不都合な真実」

本物と出会うために知っておきたいこと
山本 謙治 プロフィール

牛という生き物は、出荷時には800kg前後に肥え太った、圧倒的な存在感をもつ大型動物だ。その大いなる存在の断片を、私たちはご馳走として食べている。

だから、牛肉のことを理解しようと思ったら、その牛がどう育ってどう死に、どんな工程を経てパッケージされ、そして私たちの前に並ぶのかをとくと知っておくべきだ。そうでないと、本当に牛肉を理解したことにならないと僕は考えるのである。

「牛って広い牧場で、ゆったり育っているんでしょ」
「牛が食べるものって、青々とした牧草だ」
「和牛とは、はるか昔から日本にいた牛である」
「やっぱり鮮度の高い肉ほど美味しいよね」

正直に言うと、これらすべての間違ったイメージは、畜産の素人であった僕自身が、かつて抱いていたものだ。そして、実際の牛に触れるたびに「ええっ! 思っていたものと全然違う生き物だぞ!?」と驚いてきた。

だから、一般の人が牛肉についてどのように感じているか、つまり”識らないポイント”についても僕はよく理解しているつもりだ。

 

牛肉を面白く味わうために

「かつて素人だった」と書いているとおり、現在の僕は素人とは言えない立場にいる。農畜産物流通コンサルタントと、農と食のジャーナリストという二つの肩書きを持っているのだが、その本業とは別に、僕は牛を所有している。

岩手県と北海道に、母牛を1頭ずつ所有している。日々の世話は現地の農家の方々に委託しているが、餌代や世話をする手間賃は僕が全額出している。毎年、子牛が1頭ずつ生まれるので、信頼できる農家に預けて肉にし、自分で販売をしているのだ。

今も続くこの体験の中で、僕の牛肉に対する考え方は日々塗り替わっている。そして痛感しているのが、「牛のことを識らなければ、牛肉のことはわからない」という当たり前のことだ。この当たり前のことがなぜか、日本では常識とはなっていないのだ。

だから一歩踏み出して牛のことをよく識ると、牛肉をもっと面白く、そして美味しく味わえるようになる。また、大変な苦労をしながら牛を飼っている農家や、流通に関わっている人達が直面している問題を識れば、牛肉を簡単に「高い!」とは言えなくなると思う。

「牛肉」ではなく「牛の肉」と呼ぶことによって、それが始まるのだ。

牛肉ひとつにも、とてつもなく広くて深い世界がある。ただ、その世界を理解するための方法論は疑いなく存在する。

炎の牛肉教室!』が、牛の肉の美味しさを論じるための「道しるべ」になれば幸いである。

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