2017.12.12

「熟成肉」が美味いとは限らない、牛肉の「不都合な真実」

本物と出会うために知っておきたいこと
山本 謙治 プロフィール

知らずにニセモノを食べているかも

話を戻そう。

近年流行している「赤身肉」というキーワードにも、混乱が見られる。いったいどんな肉が赤身肉であるかがとてもあいまいで、僕からすれば、「これは霜降り肉じゃないか」というものまで「赤身」を謳っているケースが多い。

また「赤身が美味しい」という触れ込みで、単に安価な輸入肉をバンバン売ろうとする店が多いようにも感じる。赤身が美味しくなるためには品種や餌、そして月齢など様々な条件があるのに、そうしたことは全く見向きもされず、単に霜降りではない肉ばかりが良いとされるのも、おかしいことだ。

話題の「熟成肉」も、振れ幅が大きいキーワードである。2010年あたりから「熟成肉」の看板を出す店は増えたが、残念なことに、単に腐敗に近づいた肉を「熟成」と称して出している店が相当数あるように感じる。

そもそも、単に業務用の冷蔵庫に、裸の肉を置いておくだけで、質のよい熟成などできるはずがない。

一方で、本来は肉を真空パックせず空気に触れさせながら熟成させたものが「熟成肉」だったはずなのに、真空パックでの冷蔵期間を少しばかり延ばして「熟成肉」を謳う店も多い。

そんな「なんちゃって熟成」をしていて恥ずかしいとは思わないのだろうか……と嘆いてみても、現状では特に一定の基準があるわけではないため、本物とニセモノの違いを見分けられるように、消費者が賢くなるしかないのである。

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そして、この牛肉ブームの裏側で、国内の多くの肉牛生産農家が離農している事実をご存じの方は少ないだろう。こんなに牛肉ブームなのだから、肉牛を育てる仕事はさぞ儲かっているのだろう、と思われるのに、なぜそんなことが起こっているのか?

 

大いなる存在の断片

こんなふうに、私たちは牛肉のことを識っているようで、実のところ、あまり識らない。それは当然のことかもしれない。というのも、私たちが日々出会う牛肉は、完成された「牛肉商品」であって、それ以前の姿をとどめていないからだ。

家庭の主婦が精肉売場で選ぶのは、綺麗にスライスされて白いトレイに整然と並べられた商品だ。

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また、行きつけのレストランにて、鉄板の上でジュウジュウと音を立てながら焼けているステーキを前にしたとき、目の前の牛肉の生前の姿に思いを馳せる人もほとんどいないだろう。

「牛肉商品」に「牛」を感じさせる要素はあまり存在しないし、むしろ提供する側は、生きていた頃の牛を想像させると、お客さんの食欲がなくなるだろうとおもんばかり、牛と牛肉を繋げるような情報を掲示したがらない傾向にあるようだ。

そこであえて、牛肉を「牛の肉」と言い換えてみよう。すると、様々なことが見えてくる。

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