2017.12.12

「熟成肉」が美味いとは限らない、牛肉の「不都合な真実」

本物と出会うために知っておきたいこと
山本 謙治 プロフィール

「A5」というのは、歩留まりがAで、肉質が5という牛肉の格付けを示している。この格付けは日本食肉格付協会が定めており、基本的に全国の牛肉市場がこの格付けを採用して、屠畜した牛をグレード別に分けている。

「歩留まり」とは、一頭の牛から骨・皮・内臓をとり去った後にどれだけの肉が残るのかという割合を示す。つまり「肉がたくさんとれたかどうか」ということだ。たくさんとれた順からA・B・Cで表す。

一般的に肉専用種はAになることが多く、乳用種はBからCとなる。乳用種はたくさんお乳を出してくれることが重要なので、肉はあまりとれなくてよいが、肉専用種の黒毛和牛は歩留まりが高くなければならない。

次に「肉質」とは、肉の総合的な質の判断で、5段階で表し、5が最上の評価となる。肉質で最も重要視されるのが脂肪交雑だ。日本食肉格付協会が定めている脂肪交雑の基準をBMS(Beef Marbling Standard)といい、ナンバー1からナンバー12までの12段階に評価される。

これに加えて肉のきめがよいか、締まりがあるかといった部分や、肉や脂の色などを総合的に判断し、5段階評価をしたものが肉質等級である。

つまりA5とは、「肉がたくさんとれて、かつ霜降り度合いが最高レベルに高い」牛を指すのだと言ってよいだろう。

 

「食べるならA3くらいがいいよね」

ここまで読んできて、こう思った読者もいるだろう。

「食肉格付けで有利な黒毛和牛が生き残って、不利な品種が淘汰されるのは宿命だ。仕方のないことではないか?」

たしかにそういう考え方もあるかもしれない。ただ、それを認めるためには、「食肉格付けで上位になる牛肉がほんとうに美味しいのであれば」という但し書きをつけたい。

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先の日本食肉格付協会の基準の中に、「美味しさ」という言葉は一切出てこないのだ。

「いやいや、基準に味のことが言及されていなくても、そもそも霜降り度合いが高いことが美味しさに反映するから基準になっているんじゃないか!?」

そう思われる方も多いだろう。もちろん僕も、格付け基準が全く味を反映していないというつもりはない。ただし「すべてのA5の肉が美味しいわけじゃない」ということは、多くの食肉関係者が異口同音に言っている真実でもあるのだ。

食肉関係者が集まる懇親会などでA5の肉が供されると、そこにいる誰もが「おおっ、いいサシだね!」「小ザシがみごとだね!」と評価するのだが……それを喜んで口にする人をあまり見かけない。それどころか、「食べるならA3くらいがいいよね」という人のほうが体感的に多い。

また、とある会で僕が講演をし、A5の黒毛和牛偏重を批判する話をした後の質疑応答の場面で、「あなたはそう言うが、A5にも美味しいものがあるんだ!」と、老舗の牛肉料理店の役員さんが憤って反論してきたことがある。

しかしこの話、「A5にも美味しい肉はある」と言った時点で、美味しくないA5があるということを自分で認めているようなものではないか。

もちろん僕はA5の肉をおとしめているわけでも、格付けをやめろと言っているわけでもない。ただ、格付けが上位になることで価格が高くなり、生産者が黒毛和牛ばかりを選択する状況になってしまったという現実が悔しいのである。

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