保育園が子どもの「攻撃性」を減少させるという驚きの研究結果

恵まれない家庭の子どもに効果アリ
山口 慎太郎 プロフィール

多動性・攻撃性傾向が減少

いよいよ本題である「保育園通いの効果」を検証してみよう。

基本的な発想は、2歳半の時点で保育園に通っていた子どもと通っていなかった子どもの発達状況の比較だ。

もちろん、両者は保育園に通う前の段階から様々に異なっている可能性があるため、単純な比較ではなく、両者の違いを統計学的に補正している。つまり、相関関係と因果関係の違いには十分注意を払った上で分析している。

図2:保育園通いの子どもの発達に対する効果(注:すべての指標は平均0、標準偏差1になるように正規化してある)

「保育園通いの効果」を母親の学歴別に示したものが図2である。言語発達については、家庭環境にかかわらず一定の好影響が見て取れる。これは集団生活から与えられる刺激が言語発達を促しているものと考えられる。

一方、多動性・攻撃性傾向については家庭環境によって効果が異なる。母親が高卒未満である子どもたちの多動性・攻撃性傾向は減少している、つまり行動が改善されている。

しかし、母親が4大卒以上である子どもたちの多動性・攻撃性傾向は変化していない。図には示していないが、母親が高卒・短大卒である場合と4大卒以上である場合には大きな違いは見られなかった。

我々の分析結果は、保育園が幼児教育施設として機能していることを示している。ただし、その効果は恵まれない家庭に育つ子どもたちに強く表れており、平均あるいはそれ以上に恵まれた家庭に育つ子どもたち対する効果は限られたものである。

注意してほしいのは、幼児に対する英才教育の効果を検証しているわけではないという点だ。

もう一つ重要なのは、保育園通いが子どもの発達に大きな悪影響をおよぼすことを示唆するような分析結果は得られなかったということだ。

子どもを保育園に預けて働くことに罪悪感を持つ親も少なくないと思うが、そうした親にとって今回の研究結果は安心材料になるのではないか。

次回は、なぜ保育園通いが子どもたち、特に恵まれない家庭で育つ子どもたちの行動が改善されるのかについて明らかにしたい。