週刊プレイボーイの黄金期を築いた伝説の編集者・島地勝彦が、ゲストとともに“大人の遊び”について語り合う「遊戯三昧」。今回は、精神科医の和田秀樹さんをお迎えして、日本社会に蔓延する「息苦しさ」の原因を考えます――。
島地: ワダさんは灘中、灘高から、現役で東大の理Ⅲに入学するほどの秀才だから、医学部というのは子どもの頃から具体的な目標だったんですか?
和田: 世間的にみれば超エリートコースかもしれませんけど、高校時代は映画にどっぷりはまっていて、ろくに勉強してなかったから成績はほめられたものじゃないですよ。
日野: それで理Ⅲに現役合格できるんだから、世界が違います。
和田: なんというか、灘高って、まわりがみんなデキるやつばかりだから、成績がトップじゃなくても特に焦りはないんですよ。それに、ほとんどが東大を第一志望にする環境ですから、自分も自然にそうなったというのが本音で、高邁な理想があったわけじゃないんです。
島地: 前にも聞いたことがあるけど、勉強法はかなり独特だったんですよね。
和田: 考え方次第なんです。いくら東大理Ⅲといっても、入試で100点を取らなきゃいけないわけじゃない。ぼくの時代だと、440点満点中、だいたい290点取れれば受かると言われていました。つまり150点は落としてもいいわけです。
数学には自信があって、ここはほぼ満点を取れる。一方で現代文には苦手意識があったので、ここは最悪20点しか取れない。それをベースにすれば、他の科目で何点取ればいいかがわかるので、闇雲に勉強するのではなくある程度は戦略的にやっていて、それがうまくハマったんだと思います。
島地: すげぇなあと思ったのは、弟がいて、ワダは「出来の悪いヤツなんで、ぼくが勉強のコツを教えた」と。で、その弟が何をやっているかというと、
和田: 検事、ですね。
日野: ぶッ。地頭が違うんですね、やっぱり。
島地: ぼくが集英社インターナショナルの社長をやってるとき、『痛快!心理学』という本を一緒につくりましたよね。ものの見方や考え方が日本人離れしていると感じたけど、それはどこで培ったんでしょうか。
和田: やっぱりアメリカ留学が大きかったです。
島地: アメリカでは心理カウンセリングを受けるのが一般的で、精神科の先生も、別の先生にカウンセリング受けるといいますよね。
和田: アメリカと日本の精神科医の違いは、自分が患者の立場になったことがあるかどうかです。あるグループ治療に参加したときのことですが、「最近、先生が私に休暇中の連絡先を教えてくれなくてつらい」と泣き出す女性がいました。ずいぶん勝手な話だと思っていたら、その女性は地元で評判の精神科医だったんです。
島地: カウンセリングでいろんな話を聞いていると、自分の中にも鬱屈したものがたまるでしょう。それを包み隠さず、今度は自分が患者として打ち明けるわけですね。
和田: ぼくも経験ありますけど、自分の中にあるモヤモヤしたものを打ち明けると、気持ちがすごく楽になります。そして、どんなふうに話を聞き、どんな言葉をかけられると安心するのかよくわかるから、その経験は自分が話を聞く立場になっても生きてきますね。
日野: なるほど。より患者に共感しやすくなるわけですね。じゃあ、島地さんの悩みをぼくが聞くようにすれば、島地さんはぼくのことをわかってくれるようになる、と。
島地: 残念ながら、お前に相談することなんてないぞ。
日野: ですよね。常に「今が人生の真夏日だ!」とおっしゃるお方ですから。ところで和田さん、島地さんのように超ポジティブに生きるには、どうしたらいいんでしょうか。