深夜ドラマ『セトウツミ』に私がドップリはまった理由

何も起こらないという衝撃
堀井 憲一郎 プロフィール

「ジャパン・レールウエイはほんま混むな」

ドラマ第1話冒頭は、何の説明もなく、階段に座っている2人がいて、まず20秒、そのまま映っているだけだった。音楽も、効果音も、なにもなく、ただ2人が映っている。20秒。

そのあと唐突に瀬戸が話し始める。元サッカー部、どっちかというと元気でアホなほう。

「冬休みにな、ユニバーサル・スタジオ・ジェー・ピー行ってきてん」

………どこ略しとんねん。ジャパン略すとは何たる了見やねん。ユー・エス・ジェーとかでええやん

「別にどこ略そうが、俺の勝手やんけ」

まあ………………ユニバって略すやつ全員しばくけどな……ほんで、ユー・エス・ジェーはどやったん?

「もう、幸せハッピーやったわ」

なんやその戦争ウォーみたいな言いかた…………(間)…………だから、どう楽しかったか詳しく言えや

「………まず右足から靴はいて、んで、玄関出てから靴紐むすんでんやんか」

そこは略してええねん

「ほんで行きの電車、めっちゃ混んでて」

まあ、そやろな

「ほんだら何だかんだでやっぱり帰りの電車も混んでにゃあな」

どこ略しとんねん。プロローグとエピローグだけ見せられて本編そっくりカットやんけ

「休日のジャパン・レールウエイはほんま混むな」

そこは略せや。JRでええわ

このとき画面には「JAPAN RAILWAY」と文字が出て、JとRに丸がつく。そのあと少し会話あって(そこは飛ばして)再びウツミのセリフから。

そもそもおれ、略語だいっきらいやからな

「リャクキラかいな」

略語が、嫌いや、ねん

「なんでやねん、略語、便利やん」

もうちょっとやん。全部言ったらええやん

「あけおめとか」

あー、もう最悪やそれ。反吐が出るわ

「サイヘドなん」

…………一番嫌いなんは、自販機やな(画面に自動販売機の文字が出る)。あの、ひとつ飛ばしでうまいこと言った感(画面で自、販、機の文字が丸で囲まれる)がめっちゃ腹立つわ

「おれ、ジドハンて言うけどな」

延々とこのまま続く。

 

ここでは、セトがボケで、ウツミがツッコミである。あまりものごとを深く考えずに喋るウツミと、物知りで冷静で論理的なセトがそのキャラに割り振られている。

しかし、ときにボケとツッコミが入れ替わる。かつての西川きよし横山やすしの漫才のようである。瀬戸が深く考えずに発言したことを、内海がその裏を深く読みすぎてしまって、どんどん間違いの深みに入っていくというパターンである。ババ抜きの回、絵しりとりの回がそうだった。この場合、ウツミがボケで、セトがツッコミとなる。攻守入れ替わるところがすばらしい。

会話の内容には意味はない。ただ自分の奇妙なこだわりを勝手に話してるだけである。めんどくさいだけの2人やなあ、と言われれば(女子にはそう言われそうな気がする)そのとおりだ。