中国最大のeコマース企業アリババの子会社が、フィンテックで世界のトップを独占しつつある。
中国は長い歴史を通じて官僚国家であり、そのため、高度の技術を持ちながら、企業家精神に先導されたヨーロッパに後れをとった。
いま、中国に企業家精神を持つ人々が育ちつつある。これは、中国の歴史の中で注目すべき出来事だ。
今年の11月15日に発表された「フィンテック100」で、中国最大のeコマース企業である阿里巴巴集団(アリババ・グループ)の関連会社が、トップ3を独占した。
なお、トップ10社のうち、中国企業が5社を占めている。これはアメリカ3社より多い。
「フィンテック100」は、国際会計事務所大手のKPMGとベンチャー・キャピタルのH2 Venturesが作成するフィンテック関連企業のリストだ。これまでの推移を見ると、2014年では、100社に入った中国企業は1社だけだった。
15年には7社となり、インターネット専業の損害保険会社である衆安(ジョンアン)保険が世界のトップになった。
16年には、アメリカが35社、中国が14社となった。世界のトップは、電子マネー、アリペイを提供する螞蟻金融(アント・フィナンシャル)だった。アリペイが東南アジアを席巻しつつあることは、「中国のフィンテックが日本のはるか先を行くのは当然だった」で述べた。
17年版で上位3位に入ったのは、螞蟻金融、衆安保険、そして趣店(クディアン)だ。趣店は、オンラインマイクロクレジットサービス 。
注目すべきは、これら3社のすべてが、アリババ・グループの子会社であることだ。
アリババはこれまで、企業間の電子商取引をサポートするマッチングサイト「阿里巴巴 」(1999年に設立)、個人対個人の電子商取引サイト「淘宝網」 (タオバオ、03年に設立)、「天猫」(Tモールl、08年に設立)などを運営してきた。
それが、フィンテックの分野に進出しつつあるのだ。
アクセンチュアによると、2016年のフィンテック関連投資額は、中国と香港の合計で102億ドルになった(なお、日本のフィンテック投資額は、わずか1億5400万ドルに過ぎない)。この背後には、アント・フィナンシャル が、16年4月に45億ドルの資金調達をしたことがある。
アリババは、2015年にニューヨーク証券取引所に上場した。現在の時価総額は、アメリカ株のランキングとして、第4位となっている(2つあるグーグルの株式をまとめると、アリババは第5位になる)。時価総額は454億ドルだ。
日本で時価総額が最大であるトヨタ自動車の時価総額が、第38位で185億ドルであることと比較すると、アリババの時価総額の巨大さが分かる。