トランプ米大統領は1日平均5.5回も「事実ではない」ことを公言、発信するそうだ。
ワシントン・ポスト紙の「ファクト・チェッカー」(11月14日付)によると、トランプ氏が1月20日の大統領就任から298日間で発した嘘や事実の歪曲、誇張などの総数は1,628回に及ぶという。
71歳にして、このエネルギッシュぶり。その原動力が超人的なエゴ、自己顕示欲の強さであることは疑いがない。
ギネスブックに「フェイク王」というジャンルがあれば、有力な王者候補だろう。
*
そのトランプ氏が今度はツィッター発信でイギリスと悶着を起こしている。
極右団体「ブリテン・ファースト(英国第一)」の幹部が反イスラム感情を煽る目的で投稿した動画をリツイートし、イギリス側が猛反発する展開になっているのである。
動画は、イスラム教徒による市民への暴力や聖母マリア像を破壊するものだとする3本。
トランプ氏が29日にリツイートすると、メイ首相はトランプ氏の行動を「間違っている」と批判し、コービン労働党党首は「忌むべき行為、イギリス社会への脅威だ」と強い嫌悪感を示した。
そして、ぞっとするのが、ホワイトハウスの姿勢である。
動画の信憑性について、サンダース大統領報道官は記者会見でこう語ったのである。
「ビデオの内容が事実かどうか(に関わりなく)、(イスラム過激派の)脅威は現実である」
(”Whether it’s a real video, the threat is real.”)
やはり、トランプ政権には「事実」へのこだわりが薄いようである。
解任の噂が流れるティラーソン国務長官がトランプ氏を「間抜け」と呼んだというエピソードが10月に報じられたが、その苛立ちが目に浮かぶようである。
それでは、トランプ氏は何を目的に早朝から怪しげな動画を拡散するようなことをしているのだろうか。
アメリカではトランプ氏の「精神状態」を疑うべきだとの指摘も出ているようである。
しかし、トランプ氏が過激なツィッター発信でニュースを次々と「上書き」することに成功していることも事実である。
それはある種、トランプ流のマインドコントロールなのかもしれない。
過激な発信の連続攻勢で、トランプ氏にとって都合の悪いニュースには焦点が当たらなくなり、人々の記憶からも消えていくということである。