鳩山首相「普天間公約反故」でも5月政変がない3つの理由

しかし沖縄差別への闘争は静かに、したたかに広がっていく
佐藤 優 プロフィール

   問題の本質は、日本の陸地面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄県に米軍基地の74%が存在しているという事実が沖縄に対する、中央の政治エリート(国会議員・官僚)、全国紙・テレビの記者たちの無意識のうちにおこなっている差別なのである。この差別を解消するために、これから沖縄の政治家、有識者、マスメディア関係者は、したたかな闘争を仕掛けていくことになると筆者は見ている。直情的に鳩山政権を打倒を訴えるなどという、結果として沖縄にマイナスになる動きを沖縄はしない。

米軍がもっとも恐れるシナリオ

 第三は、米国の思惑だ。米国はとにかく、事態の安定化を望んでいる。東京の中央政府が沖縄の民意に反する軽率な行動をとることを米国は望んでいない。米国がいちばん恐れるのは普天間問題がこじれることによって、沖縄のすべての米軍基地が住民の敵意に囲まれるような状態になることだ。とりあえずは、鳩山政権の「お手並み拝見」というところで、様子見をする。米国のオバマ政権が、鳩山政権を積極的に見切るというシナリオはない。

  従って、今回の沖縄入りによって、短期的に鳩山政権の権力基盤は強化される。しかし、その結果、日本の国家統治にとって、深刻な宿題を抱えることになった。

  4・25県民大会で、仲井眞知事は、<終戦からかれこれ70年、日本復帰をしてから40年たちました。戦争の痕跡はほとんどなくなりました。しかしながら、米軍基地、基地だけは厳然と、ほとんど変わることなく目の前に座っているわけでございます。/ですからこれは、日本全国でみれば明らかに不公平、差別に近い印象すら持ちます>(4月25日asahi.com)と述べた。

  普天間問題の本質が、沖縄差別であるという認識が、沖縄の人々の間で静かに共有されている。この認識が「日本の中央政府を信頼していると、われわれが名誉と尊厳を維持して生き残ることができなくなるのではないか? あの人たちは、われわれを同胞と見なしていないのではないか」という政治意識に発展するのは時間の問題だ。今回の鳩山総理の沖縄入りによって、日本の国家統合が揺らぎ始める危険がある。

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著者:佐藤優
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