貴乃花と日馬富士、被害者が悪者になる「バカげた事件」の不快さ

横綱に媚びる道徳なんていらない!
原田 隆之 プロフィール

危機管理委員会という茶番

それに輪をかけて酷かったのが、日本相撲協会の危機管理員会なるものが出した「中間発表」である。

そこでは、以下のようなことが発表された。

1 一次会で、白鵬が貴ノ岩の言動に説教をしたが、日馬富士はそれを庇った。
2 貴ノ岩は両親を亡くしており、似た境遇にある日馬富士は日ごろから彼を気にかけ可愛がっていた。
3 二次会になって、白鵬がまた説諭を始めたとき、貴ノ岩がスマートフォンをいじっていたので、日馬富士は大横綱の白鵬に何たる態度かと腹を立て、貴ノ岩の顔面を平手で殴った。
4 貴ノ岩がそこで謝罪していればよかったのに、それどころか睨み返してきたため、さらにカラオケのリモコンなどで殴った。

 

危機管理員会なるものが、中立的な立場ではなく、明らかに「加害者寄り」であることがはっきりとわかる。

そもそも、被害者の貴ノ岩から事情を聞くことができていないのに、加害者側からの一方的な言い分だけを聞いて、「中間発表」を出したところにも、その性格が如実に現れている。

貴乃花親方が貴ノ岩の聴取を拒否しているから、貴ノ岩の事情聴取ができなかったということは事実であっても、肝心の被害者から事情を聞けていないのであれば、この時点でこれを出すことは拙速である。

そして、その内容自体についても、論評をするのも嫌になるほどのあまりの酷さである。まるで、日馬富士が主人公の安っぽいメロドラマである。

〔PHOTO〕gettyimages

日馬富士は確かに人望もあり、人情家だったに違いない。しかし、そんな修飾語はいらない。事実をきちんと客観的に書くべきだ。日頃から面倒を見ていたとか、庇っていたとかという誘導的なストーリーにはうんざりするほかない。

また、それとは対照的に、貴ノ岩を一貫して「悪者」として描き、「謝罪をしていればこんなことにはならなかった」と、あたかも彼一人にすべての責任を負わせるかのような態度は、卑劣としか言いようがない。

前回の記事(「日馬富士事件」大相撲からいまだに暴力沙汰が消えないワケ)で述べたように、この世に無抵抗の人間を殴ってよい理由など1つもない。百歩譲って、日馬富士がどれだけ善人でも、貴ノ岩がどれだけ悪人でも、それは同じことだ。

聞くところによると、危機管理員会の委員長は、元高検検事長だという。検察官が正義の味方とは思わないが、あまりのポンコツさに呆れるばかりである。

『レインメイカー』という映画で、マット・デイモン扮する青くさい正義感溢れる弁護士が、老練な悪徳弁護士に「あなたはいつから堕落したのですか」と怒りに満ちたまっすぐな問いを発する場面がある。危機管理員会の中間発表は、そんなシーンを思い出させる茶番劇だった。