宿泊費がタダになる?「変なホテル」が描く冗談のようなホントの未来

これはもう…「革命」だ!
現代新書編集部 プロフィール

ゼロ号店だから社長直轄

繰り返すが、ビジネスはスピードである。特に経験の通用しないフロンティア領域の場合、少人数で進めるほうがいい。どうせ技術的なアドバイスは、外部の専門家に頼るのだ。内部の意思決定をするだけなら、少人数のほうが早く進む。

だから、「変なホテル」の設立準備までは、事業開発室の一人に任せた。彼は中途採用組で、いきなり新事業を担当したから、ハウステンボスの営業を手伝うこともない。「いったい何をやってる人なの?」と、スタッフたちからうさんくさい目で見られたという。

開業3ヵ月前からは、総支配人を置いてバトンタッチさせた。エイチ・アイ・エスから連れてきた、30代前半の若手だ。ハウステンボスの5つ星ホテル「ホテルヨーロッパ」にGM(ジェネラルマネジャー)は不可欠だが、「変なホテル」にGMは要らない。お客様の前に出て、ちゃんとした挨拶をするようなシーンがないからだ。総支配人の仕事は裏方というか、新しいシステムの開発や管理だから、若手に任せても問題ない。

この事業開発室長も総支配人も、社長である私の直轄にした。余計な雑音をはさまないようにしたのである。せっかく奇抜なアイデアが出てきたとしても、途中で潰されてしまってはたまらない。

「変なホテル」というネーミングは、ロゴも作ってくれた外部デザイナーのアイデアで、私が決めた。私ですら最初はギョッとした大胆なネーミングなのだから、もし普通の流れで平社員→課長→部長→役員と上がってくるとしたら、当然、私のところまでは届かず、途中で潰されていただろう。

ちなみに総支配人は当初、この名前が嫌で嫌でたまらなかったという。いまではこのネーミングのおかげでヒットしたと理解しているが、ホテルが認知されるまでは、どこで口にしても笑われた。

 

ロボットを仕入れるのは彼の仕事だが、例えばメーカーに「『変なホテル』と申しますが」と電話すると、イタズラ電話だと思われてガチャンと切られてしまう。「いえいえ、変なホテルなんて卑下されずに、正式なホテル名をおっしゃってください」と言われたこともあるらしい。

重要なのは、二人ともホテル経営は素人だったことだ。従来と同じようなホテルを作っても仕方がない。ホテル業界に革命を起こすほど、オリジナリティのあるホテルにしたかった。だから既成概念に縛られないよう、素人を選んだのだ。そういう点では、ここが「奇妙なホテル」であることに間違いはない。

その後、2017年3月に舞浜の2号店が、同8月に蒲郡の3号店がオープンした。ホテル事業の管轄で、これから続々とオープンする店も同様の扱いになる。しかし、ハウステンボスの1号店だけはテーマパーク事業の管轄で、社長直轄のままだ。

もちろん、新しくオープンする「変なホテル」には、その時点での最新技術を導入する。ただ、将来に向けたさまざまな実験をしていくのは、今後もハウステンボスにある1号店。いわばゼロ号店の位置づけであり、だから社長直轄なのだ。観光ビジネス都市でなければ、大胆な実験はできない。(聞き手・構成/丸本忠之)

後編に続く