宿泊費がタダになる?「変なホテル」が描く冗談のようなホントの未来

これはもう…「革命」だ!
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そこで、センサーを利用することにした。すでにセンサーはあって、宿泊者がフロントの前に立つと、自動的に「いらっしゃいませ」としゃべるようにはなっていた。これを応用できないかと考えたのだ。

宿泊者カードを投函する場所にセンサーを設置して、書き終わったかどうかを感知する。そしてボタンを押さずとも次にやってもらいたいことを自動的にしゃべらせるようにした。お客様としては、自分の行動をロボットに見られている感覚になるので、少し会話感が出た。これが第1弾の進化だ。

次に考えたのは、そもそも宿泊者カードが必要なのかということだった。ボールペンで紙に書き込むところが、悲しいぐらいに未来的じゃない。未来のホテルをイメージしていらっしゃったお客様はガッカリするだろう。

そこで、紙をなくしてしまった。電子台帳にしてしまえば、宿泊者カードを読み取る手間も、保管する手間もなくなる。旅館業法の定めでサインだけは必要なのだが、住所や電話番号を書く手間がなくなれば、お客様も大喜びだろう。

インターネット予約の際にお客様の情報はわかっているのだから、目の前の人とその情報を結び付ければいいだけの話。そこでタブレットにお名前を入力していただき、それで宿泊者情報を引き出すようにした。これが第2弾の進化である。

しかし、タブレットに入力する手間すらなくしてしまいたい。そこで音声認識を導入した。フロントロボットの前に立つと、センサーが感知して「お名前をお願いします」としゃべる。そこでマイクに向かって自分の名前を言うと、予約時に登録した情報がタブレットに表示される。問題なければ電子ペンでタブレットにサインする。書くのはサインだけだ。これが第3弾の進化だった。

音声認識を導入したのはホテル業界初だが、チェックインの時間が劇的に短くなった。名前を言って、確認してサインするだけだから、数十秒で終わってしまう。ここまでチェックインが速いホテルは世界に存在しないだろう。

パスポートをかざすだけ

フロントロボットの言語対応は、当初は日本語と英語だけだったが、いまでは韓国語と中国語も含めた4言語に対応している。

ただし、音声認識は日本語だけである。技術的には多言語化が可能なのに、やっていないのは、その必要がないからだ。外国人の場合、パスポートで本人確認ができてしまうからである。

旅館業法では、外国籍の方を宿泊させる場合、パスポートのコピーをとることが義務づけられている。ロボットにコピー取りはできないので、当初は外国籍の宿泊者がいらっしゃるたびにスタッフが出ていき、パスポートをお預かりしてコピーしていた。
日本人のチェックインはどんどん速くなったのに、外国人のチェックインは時間がかかるままだった。時間がかかるというのは、従業員の生産性も下がるということだ。解決の必要がある。

パスポートリーダーでスキャンして電子情報として保存しておけば、必要なときにいつでも印刷できる。

お客様はパスポートの顔写真が載ったページをパスポートリーダーにかざす。名前を文字解析して、予約時に入れた宿泊者情報がタブレットに提示されるので、電子ペンでサイン。これなら数分で終わる。

 

ただ、ややこしいのは、外国人でも日本在住者の場合、パスポート提示の必要がないことだ。この見極めが難しかった。

英語が話せるお客様なら、まだスタッフも対応できるが、韓国語や中国語などしか話せないお客様だと混乱が生じる。こちらは「外国人はパスポートを提示する義務がある」と伝えたい。先方は「たしかに外国人ではあるが、いまは日本に住んでいるので提示の義務はない」と伝えたい。ところが、言葉が通じないから、時間ばかりが過ぎていく。そんなこともあった。

そこで、画面で「日本に住んでいるかどうか」を選んでもらうことにすると、問題はたちまち解決した。

つまり、こういう形だ。まずはタブレットで使用言語を選ぶ。日本語を選んだ人は、音声認識へ進む。英語・中国語・韓国語を選んだ人は、次に日本に住んでいるかどうかを選ぶ。住んでいない人はパスポートをかざす。住んでいる人は名前を入力する。こういう手順で進むわけだ。

面白いことに、「変なホテル」は外国人の方のほうが喜んでくださる。日本旅館の「おもてなし」に慣れた日本人のなかには、人間の出迎えさえないホテルが味気ないと感じる人もいる。ところが、海外では最小限のサービスがスタンダードで、なるべく宿泊者に干渉しないようにする。外国人のほうが慣れているわけだ。

最初から「おもてなし」を期待しないので、失望がない。そのぶん働くロボットの魅力に目がいく。「こんなクールなホテルは見たことがない」と言ってくださる方も多い。