なぜ日本は3・11以前の原子力政策に後戻りしているのか

日本が抱える「核」のジレンマ
鈴木 達治郎 プロフィール

北朝鮮の核の脅威にどう対峙すべきか

このたび上梓した『核兵器と原発――日本が抱える「核」のジレンマ』(講談社現代新書)の原稿を脱稿しようとした9月3日、北朝鮮が6回目の核実験を行った。今回はこれまでよりも大規模で、広島原爆の10倍の威力(防衛大臣の発言)を持つと推定されている。度重なるミサイル実験と今回の核実験は、とても許容されるべきではない。

 

北朝鮮の核の脅威が迫る中、米・韓・日は制裁に加え軍事圧力を強めており、北朝鮮情勢はこれまででもっとも緊迫した事態を迎えている。これに対して、日本や韓国からは、「米国の拡大核抑止力(核の傘)」をさらに強めてほしいとの要請が続き、一部には「独自の核抑止力を持つべき」との意見まで出始めている。

だが、私たちは挑発に乗るのではなく、冷静に考えてみる必要があるのではないか。

はたして「核抑止」「核の傘」は本当に日本国民を守ってくれるのだろうか?

もし、核抑止が機能しなかったら、いったい日本はどうなってしまうのか?

北朝鮮の核の脅威を恐れているということは、核抑止に対する信頼が揺らいでいるということではないのか。

一方で、この核抑止への依存が、原子力平和利用の推進、とくに核兵器の材料であるプルトニウムを再利用する、核燃料サイクル政策の推進と密接に絡んでいることが明らかになった。

世界は今、核兵器の廃絶に向けて、しっかりと動き始めている。今こそ、日本の「核抑止」依存政策を見直すべきだ。と同時に核燃料サイクル政策も見直す必要がある。

『核兵器と原発』は、原子力や核兵器といった高度な技術的、政治的問題について、専門的知識がない人にもわかるよう、わかりやすく書かせていただいたつもりである。

核分裂のしくみから、核軍縮の国際的枠組みに至るまで、幅広い課題を扱った。北朝鮮の核問題、トランプ大統領の登場など、最新の課題も取り扱うことができた。

核兵器や原発に関連する組織(団体)および専門用語に関しては、『核兵器と原発』の巻末に付記した「補足・用語解説」もご参照いただきたい。

この『核兵器と原発』が日本の抱える「核」のジレンマについて、少しでも理解を深めるきっかけになれば幸いである。

読書人の雑誌「本」2017年12月号より