知らぬ間に「殺人物件」「事故物件」をつかまされない唯一の方法

事故物件サイトになくても油断は禁物
南野 真宏 プロフィール

「この一言」で業者の先手を打て

では、そのような状況下で買主、借主はどのような防衛策をとればよいのだろうか。これだけネットに情報が溢れている現在、それを利用しない手はないだろう。

たとえば、大島てる氏の事故物件サイトは有名である。もとより単に住所やマンション名を検索すれば、嫌悪すべき過去が判明することもある。がしかし、ネットサーフィンで情報にヒットしなかったからといって安心するのは禁物である。

そもそも自殺や他殺、孤独死などの嫌悪すべき事実は、遺族にとってもそうだが、売主・貸主にとっても隠したい事実である。事故物件になったら借り手がつかなかったり家賃を下げなければならない。遺族にも体裁がある。部屋に自殺者が出たら、できる限り病院で死んだことにしたいのは当然の感情であり流れといえよう。

顕在化している物件は、期せずして表に出てしまったものと考えるのが自然であり、全体数からすると、あくまで氷山の一角であろう。

ネット情報は万能ではなく、真実は、近所の人や近くのお店の従業員の心の中に秘められているケースも少なくない。従って、近隣ヒアリングは不可欠となる。

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が、そんなネットや実地調査を潜り抜けた事故物件に遭遇する可能性はゼロではない。万が一にも、知らずに心理的瑕疵物件を購入ないし賃借してしまうと、通常一般人の受忍限度内として、損害賠償すら認められない可能性がある。

そこで、提唱するのが、契約する前に「こんな物件だったら要らない」とあらかじめ伝えておくことである。隠れた瑕疵を巡って、通常一般人の受忍限度内か否かの解釈を争うのではなく、民法95条の錯誤の意思表示を主張して、法的に別の角度から契約解除を可能とするのである。

 

民法95条では、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする」とされている。“要素”とは、その錯誤がなければ、その意思表示はなかっただろうと考えられるほど重要な部分のことであり、あらかじめ取引において何を重視するかが表出されていれば、それも重要な部分と認められる。

ゆえに、たとえば契約前に「過去に、自殺・他殺・孤独死などで人が亡くなったような物件なら要らない」と言っていて、契約後にその事実が発覚した際は、その発覚した重要な事実をあらかじめ知っていれば契約の意思表示をしなかった(錯誤の意思表示)であろうと法的に認められ、その心理的瑕疵の程度にかかわらず、契約解除ができるのである。

しかし、この意思表示は、表明したことをはっきりと証明する必要がある。後に、言った言わないでトラブルになることを避ける為には、問い合わせの際に、「自殺・他殺・孤独死などで人が亡くなった物件はNG」と記してその送信メールを保存しておけばよい。ボールペン等消えにくい筆記用具で相手への要望内容とその反応を、日付・時間・名前と併せて書き記しておいてもよい。

一方で小型のボイスレコーダーで会話の証拠を残す方法もあるが、日常会話では、えてして主語が省略されていたり、「これ」「それ」といった指示代名詞が使われがちであり、第三者が聞くと意味不明な内容となっていることも少なくないため、お勧めしない。

誰もが事故物件(心理的瑕疵物件)に出くわす可能性がある。契約前に気づけば良いが、知らずに契約してしまい、裁判では救われないケースも多い。けれども、契約時に、一言、意思表示さえすれば、有利に調停や訴訟に臨め、法律が味方してくれる。弱い立場にある買主や借主が、“言った者勝ち”のルールを利用しない手はないだろう。

「事故物件回避術」が満載の南野氏の著書