知らぬ間に「殺人物件」「事故物件」をつかまされない唯一の方法

事故物件サイトになくても油断は禁物
南野 真宏 プロフィール

殺人物件も4年でシラを切れる

たとえば、殺人事件のあったマンションには以下の判例がある。賃借人が借りた居室内で知り合いの女性を刺殺し、自らはそのマンションから投身自殺したケース。

貸主が連帯保証人である賃借人の父親に損害賠償を請求したこの裁判では、女性が胸を刺されるという残虐な殺人事件に対して、変死事件から4年経てば、居住用ないし事務所用の賃料の約7割で賃貸ができ、その頃には通常価格で売却できる可能性があるため、4年後までの賃料減収額154万円、及び変死事件に伴う修理費用26万円の計180万円が相当であると損害賠償が認められた(東京地裁H5・11・30)。

この判決は、「4年が経過すれば心理的瑕疵は残らない」=「心理的瑕疵が残るのは残虐な殺人事件から4年間」という具体的な期間を示したものだと言える。

同様に自殺に関しても、過去の判例から、心理的瑕疵が残るのは2年程度とされるのが一般的であり、そのため、2年間の定期借家契約(定められた期間が到来すると借家契約が終了し、当然に借家人は退去しなければならないとする契約)で募集広告が打たれることも多い。

このように判例を参考に、不動産業者は独自の告知ルールを作っており、件のマンションにおいても、5年を過ぎた段階で募集広告の備考欄から「告知事項あり」の記載がなくなり、事件のことは聞かれない限り説明されなくなったのである。

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女性8名、男性1名の計9人が殺害され、その遺体が解体されたとされる座間のアパートに関しても、神隠し殺人のマンションと同じ道を辿るかもしれない。アパート名を変え、家賃を下げて新たな住人を呼び込み、ひたすら風化を待つ……、それとも建物を建て替えてしまうのかは、空き家率の推移とオーナーの懐具合・考え方次第だろう。

 

心理的瑕疵は、被害者でもある売主・貸主はもちろん、宅建業者の責任で生じるものでない。ゆえに、仲介業者はこれらを説明しないことに罪悪感が生じにくいだろうし、可能であれば告知したくないのが本音に違いない。

物件の弱みを見せることは、相手に価格交渉のチャンスを与えることにもなりかねないし、取引そのものが白紙になる可能性もある。競争の中で不動産業を営んでいる以上、一件でも多く好条件で成約させて、売上を獲得したいのに、言わなければ気づかないかもしれない不利な事項をわざわざ告知することに葛藤を覚えないはずはない。

ゆえに、先のように備考欄で「告知事項あり」と記されているケースは良心的で、特に聞かれない限り告知しないか、オーナー側から聞かされていなかったと逃げる業者も少なくない。