知らぬ間に「殺人物件」「事故物件」をつかまされない唯一の方法

事故物件サイトになくても油断は禁物
南野 真宏 プロフィール

人生に何らかの行き詰まりを感じて自らの命を絶つ。あるいは、意に反して、他人の身勝手な欲望や衝動によって、不意に命を奪われる。他殺や自殺は、無念の思いを抱いて亡くなったと想像される上に、遺体が見つかるまでに時間が経過し、見るも無残な姿のまま放置されるケースが少なくない。

特に自殺については、自宅を自殺場所として選ぶケースが約59パーセントと最も多く、同じく約7パーセントを占める高層ビルなどを含めると、建物内で亡くなるケースが大半である(厚生労働省『平成27年の自殺の状況』より)。

また、東京都監察医務院のデータベース(『平成28年度版統計表及び統計図表』)によると、孤独死と見られる東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成27年で3,127人。

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一方、ニッセイ基礎研究所では、孤立死を「自宅で死亡し、死後発見までに一定期間(死後4日以上)経過している人」と定義して全国推計を行っているが(平成22年)、年間15,603 人(男性10,622 人、女性4,981人)が孤独死しているという。孤独死の場合は、死臭や蝿が発生するようになって初めて周辺住民に発見されることが多いので、無残なその状況は孤独死の残酷さを物語る。

ここまでのデータから、自殺する人、殺される人、孤独死する人など、建物内で忌まわしい亡くなり方をする人は一日に85人程度にのぼると推測される。つまり、一日に85件、月間で2,550件、年間で約3万件のいわゆる「事故物件」が生じ続けている可能性が高いのである。

業者は「ウソをつかなければOK」

むろん、事故物件など気にしない、事件のあったマンションに住んでいると囁かれるのも問題ないという人もいるだろう。全ての人が、そうであれば問題はないのだが、通常は、当該物件の利用に心理的な嫌悪感や嫌忌感が生じるため、知らずに借りて後に過去の事件を知ってしまった際、「聞いていなかった!」ということになる。

 

なぜこのようなことが起きるかというと、民法はもとより宅建業法においても、「自殺(他殺)のあった物件は、発生時から〇年間告知しなければならない」といった細かい規定が存在しないからである。

不動産業者の説明義務に関しては、まず宅建業法35条に説明すべき事項が明記されているものの、権利の種類・内容、物件に関わる都市計画法や建築基準法の概要といったものが対象である。

また業法47条では、宅建業者の業務に関する禁止事項として、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすものにつき、わざと事実を告げなかったり、嘘をついてはいけないとあるだけで、抽象的な定めしかない。国土交通省の担当者にもヒアリングしたが、「買主・借主さんが気にされそうなことは説明しておいた方が良い」といった回答である。

そこで、不動産業者の多くは、法律上の定めはなくとも、判例などで「心理的瑕疵(物件で過去に起きた忌まわしい出来事によって通常一般人が受忍限度を超えて嫌悪感を抱き、物件の通常備えるべき品質・性能を欠いている)」が認められたケースを参考に、重要事項として告知しているのが現状なのである。