炎上弁護士が実名告白「私に殺害予告が来るまで」

男はオフィスに突然やってきた
唐澤 貴洋 プロフィール

これまで、炎上した弁護士はいない。弁護士というのは対外的な信用で仕事をする。炎上するということは、その信用が外形的に失われていくことを意味する。

私がターゲットにされたのは、当時一人で弱小事務所を運営していたことも関係があろう。立場の弱い人は、どんなに叩いても大丈夫なのだという考えが、ネット加害者にあったのだと思う。

その後、誹謗中傷は悪質を極め、私が犯罪者であるとか、詐欺師だとか、ありとあらゆる罵詈雑言がインターネット上でなされた。

同期の弁護士の中では、早くに独立していた私には、どうやったらお客様から仕事をいただけるのかを考えるのが最大の課題であった。そこで私が考えたのは、インターネットからの集客であった。しかし、炎上した結果、私の名前や事務所名で検索すると誹謗中傷が大量に表示されるようになり仕事が成り立たなくなった。

 

炎上すると完全に病む

炎上すると精神状態はどうなるのか。ネットで過剰に誹謗中傷をされると、インターネットで何を言われているのか、何が起こっているかが気になり、不安で眠れなくなる。

また、頻繁に悪夢を見るようになった。感情の起伏がなくなり、夜はアルコールがないと眠れない。当時、心療内科に行けば、なにかしらの診断がされたのではないかと思う。

また、「インターネットでの投稿を、周りの人が読んでいるのではないだろうか」、「外で私の悪口を書いている人に会うかもしれない」と周囲の目が気になり、人混みに出ることを極力避けるようになった。

ポイントカードを利用することもやめた。ポイントカードの作成時に、不用意に個人情報を外部に出せば、リスクコントロールできないと思ったからだ。後に、私と何ら関係のない同姓同名の方の住所がインターネット上に出たことがある。

その際の投稿では、「とある企業のデータベースで検索したところ」と書かれていた。企業のデータベースにおける情報管理がどこまで厳密にされているかの保証はない。

「炎上すると日常生活が完全に破壊される」——。弁護士として、初めて“被害者”側に回って感じたことだ。誹謗中傷はその後も止まることなく連日続いている。

カッターナイフが送られてきた(写真・著者提供)

殺害予告をしてくる人々

私がインターネット上で誹謗中傷されるようになって数ヵ月が経っても、私への誹謗中傷・罵詈雑言は1日も止まることなく続いていた。ところが2012年の11月ごろから、毛色の違う投稿がインターネット掲示板になされるようになった。「殺害予告」である。

殺害予告の投稿者Aは、当時高校生で、都内にある印刷会社経営者の息子であった。未成年であったため、父親に連絡を取ったところ、「息子がそのようなことをするはずがない」と回答された。

Aは反省するどころか、私がAの自宅に送付した内容証明をインターネットに投稿し挑発を続けた。その後もAからの誹謗中傷は続いていた。親は、子供のインターネット上での振る舞いについて全く管理監督できていない。これは他の未成年の加害者にも共通していた。

Aの殺害予告がきっかけとなり、私に対する殺害予告が流行となってしまった。現実社会で目の前の人に殺害を予告するというのは、冗談を除けば、相当な胆力がなければできない。もちろん、刑事事件になる可能性もある。にもかかわらず、殺害予告が簡単にできてしまうのは、インターネットが事実上、無法地帯と化しているからである。

その後、多数の殺害予告が私に対してなされた。警察がある事件に関連して発表したときは、約95万件ということであった。

カッターナイフが送られてくることも複数回あった(なお、2016年11月29日に、私宛にカッターナイフを送付し殺害予告をした者については、別件で逮捕され、取り調べを受ける中で私に対しての犯行を自供し、1年8ヵ月の実刑判決が言い渡された)。

殺害予告をされるようになってから、生活はさらに一変した。