平均寿命1位は杉並区、ではワーストは…?寿命と収入の不都合な真実

東京23区「健康格差」地帯を歩く
週刊現代 プロフィール

「付き合う人」も関係する

一方で健康保険料を滞納し、病院に行けないケースもある。23区の国民健康保険料収納率をみると足立区はもっとも低く81.1%となっている。

足立区内で開業医を営む医師は、区民の内情をこう明かす。

「金銭的に非常に困っていて、継続的に薬をとりに来ることができない人がいます。

その人たちはどうしても治療が途切れてしまうので、症状は悪化してしまいます。

いちばん大変なのは、非正規雇用者で、生活保護を受けられない、ギリギリのラインの方たち。生活保護を受けられれば、医療費が無料になるのですが、ある程度収入があるから、それもできない。

そういう人はよほどつらくならないと、病院に来ません。非正規雇用者の場合、仕事を休むと収入が無くなり、生活が成り立たなくなるからです。たまたま無料の区の健診を受けてみたら、糖尿病がかなり進んでいたという人も散見されます」

糖尿病と並び、健康格差が顕著に表れるのが、「歯」の健康だ。足立区では小学生(中学年)の虫歯率が28.4%とワーストの数字だった。次に江戸川区、葛飾区と続く。

都内23区では義務教育段階の子どもの医療費は無償なので、おカネの問題ではない。

とはいえ、世帯年収300万円以下の世帯では、親が仕事に追われ、どうしても子どもの食事がおざなりになってしまい、結果、子どもの虫歯や肥満が増えるという研究データもある。親世代の収入格差は子どもの健康にも大きな影響を及ぼす。

 

収入が高いと寿命も延びる可能性が高いことは、前述したとおり。ところが、年収トップの港区の平均寿命をみると9位に甘んじている。国民健康保険料収納率も足立区に次ぐ、ワースト2位だ。

港区のタワーマンションに住む、会社経営者の男性はこう語る。

「超カネ持ちが平均年収を押し上げているわけで、すべての人の年収が高いわけではない。区内の格差は、他の区より大きいと思う。富裕層は高級ジムに通ったり、健康への投資を惜しまないけど、そうでない区民もいる」

23区で平均寿命がもっとも長い杉並区。阿佐ケ谷駅の近くで洋服店を経営している男性(60代)に話を聞いた。ロマンスグレーの豊かな髪をオールバックにしている。体型もスマートだ。

「食事は妻がスーパーで買ってきたものを自宅で調理します。いたって普通ですよ。

たまに新宿のデパートでやっている物産展に行き、変わった食材を買ってきたりもします。私は店をしているので昼食はあまり食べません。その代わり朝食はゆっくりと時間をかけて食べています。

夕食はお酒を飲みながら、近くの料理屋で済ますことが多いかな。若いころはよく飲みましたが、最近は最初の一杯だけビールで、あとは洋酒を飲みながら長時間グラスを遊ばせるのが好きですね」

毎年、区が行う無料健診はもちろん、定期的に馴染みのクリニックでも健康診断を受けている。さらに奥さんもかなり健康への意識が高いという。

「家内は健康食品を集めるのが趣味で、私もシジミとか牡蠣エキスのサプリをよく飲まされます。筋トレやダイエット用品などにもとても詳しい。効果のあるなしは別として健康オタクですよ」

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千葉大学予防医学センター教授の近藤克則氏は「健康格差は、周りの環境とも密接に関係している」と語る。

「健康意識が高い地域に住めば『自分も気をつけよう』と、自然とそちらに引っ張られる。逆に周りの健康意識が低いと『まあ、いいや』と流されてしまう。

たとえば皇居の周りをランニングしている人に混じって走れば違和感はないのですが、ランニングしている人がいない地域で走り始めたら『なんだアイツ』となる。付き合う人を含めた社会環境なども健康格差を生む要因となっています」

自分ではなく社会が寿命を決める――それが正しいとは言わないが、この二つは切っても切り離せない関係にある。