平均寿命1位は杉並区、ではワーストは…?寿命と収入の不都合な真実

東京23区「健康格差」地帯を歩く
週刊現代 プロフィール

安い炭水化物ばかり食べる

荒川区が行った平成22年度特定健康診査では、肝機能に異常(疑いを含む)がみられた男性は34%にのぼった。

飲酒が引き起こす病気といえばがんである。23区のがんの死亡率(男性)を見るとワースト1は台東区で、次が北区、墨田区、荒川区となっている。

台東区のがんの割合で特に多いのが肺がんだ。「平成24年広報たいとう」によると、台東区の喫煙率は男性が43.4%と、東京都の平均31%を大きく超えている。喫煙もがんに大きく影響する。

ちなみに、がんワースト3位の墨田区は、「健康に関する区民アンケート調査('14年)」の結果、区民男性の約半数が一日に2合以上の酒を飲んでいることが判明。これは厚労省が定める適正飲酒量(一日1合)を大きく超えている。

 

食事と健康の関係も切っても切れない。健康格差が顕著に現れるのが「食生活」だ。
東京23区 健康格差の著者で、地域問題を研究するジャーナリストの岡島慎二氏が言う。

「所得が低い人ほど安くて満腹感を得られやすい炭水化物を好む傾向があります。そのため糖尿病など生活習慣病のリスクが常時つきまといます。

『カネ持ちは贅沢三昧で不健康』というイメージは誤りです。生活に余裕がある高所得者は、バランスのよい食事をこころがけ、無農薬やオーガニックなど食材にもカネをかける人が多く、健康への意識が高い」

実際、平均寿命が短い地域は、野菜の摂取量も少ない。足立区の一日あたりの野菜摂取量220gは、東京の平均299gと比べても少ない。日本一寿命が長い長野県は379gなので、その差は歴然だ。

同区にある竹ノ塚駅前のスーパーを訪ねた。夕方になると、仕事帰りと思われる中高年の男性がスーパーに入っていく。野菜や果物ではなく、惣菜やおにぎり、カップラーメンなどを買っていく人が目についた。

スーパーから出てきた男性(60代)に話を聞いた。

「野菜は、あんまり食べないね。だって高いじゃない。特にいまは台風の影響で、値段が高くて買えないよ。

それに、一人暮らしだから料理を作るのも面倒だしね。弁当やお惣菜を買って帰って食べたほうが楽でしょ。区の健診?案内は来ているけど、受けたことはない。理由?忙しいし、面倒だから」

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細かいことは気にしない。そんな気質の人がこの町には多い。だが、健診を受けず、偏った食生活を続けると、生活習慣病のリスクは当然高くなる。

足立区の糖尿病患者数は23区最多の約3万5000人。区民19人のうち1人が患っている計算になる(平成24年あだち広報より)。

足立区に住む、前出とは別の非正規労働者の男性(60代)は、40歳で糖尿病と診断されたという。

「50歳を超えたころから、身体に不調が現れてきて、一時は失明寸前まで悪化しました。いまはステージ4~5くらい。若いころは極真空手をやっていたので、健康には自信があったんだけど……。やっぱり酒と食生活が原因だと思う。

いまは医者から食事指導されているから、野菜も食べるけど、以前は牛丼やコンビニ弁当など、糖質の高いものばかり食べていた」

足立区としても積極的に対策を打っている。過去には区内の飲食店で野菜の豊富なメニューを頼むと、会計から50円引きするという取り組みを実施。

これは野菜不足の足立区民に少しでも野菜を食べてもらおうと、区と飲食店が協力して実現したものだ。区民に少しでも健康に関心を持ってもらおうと、区も必死だ。