松山が自ら言うようにパットだけでなく、ドライバーにも不調は表れてしまっている。ゴルフ解説者のタケ小山氏はこう指摘する。
「50位に終わったHSBCチャンピオンズのプレーを見ても、ドライバーショットは曲がりに曲がっていましたが、スイングが悪くなっているということはありません。ただ、ドライバーのクラブに迷いを感じているように見えます。
それはなぜかというと、自分の契約メーカーのドライバーを使っていないからです。ドライバーが明確に決まっていないのは、不安材料です。やはり上手くマッチングして、同じメーカーのクラブで揃えるのが理想でしょう。いままでの強いプレーヤーはみなそうでしたから」
前出の田辺氏は松山の様子をこう話す。
「今夏のある大会のラウンド中、松山プロは使用していたドライバーの打感に違和感があるという表情をしていました。
故障の可能性があるので、後日、まったく同じクラブヘッドの新品に交換したそうなのですが、それがいまだにしっくりきていないようなのです。
ヘッドの個体差なのか、スイングのズレなのか、本当に微妙で感覚的な違いなのでしょう。シャフトを交換するなどして微調整に取り組んでみても、なかなか上手くいかない。
9月下旬の大会では、スタート前の練習場で、キャディがゴルフクラブを2本使って松山プロの頭部を固定し、練習していた。こんな光景は大会中に見たことがありません。違和感を解消するために、試行錯誤が続いているのだと思います」
松山にしか感じることができないわずかな誤差が、ゴルフの歯車を狂わせているのだ。ただし、米ツアーは10月に始まったばかりで、もう年内は松山が参戦する予定はない。修正の時間はある。
トランプ大統領とのラウンドを終えた松山は、翌週の米ツアーや国内戦は欠場。11月16日から宮崎県で開幕する国内戦・ダンロップフェニックストーナメントに出場するため、そのまま日本に滞在している。これは松山にとって、良い気分転換となるだろう。
松山は1月に学生時代から交際していた東北福祉大学ゴルフ部の2年後輩の女性と結婚。黒髪のショートカットで、控えめな女性だという。7月には第一子が誕生した。
「松山プロは、夫人を米国の試合会場には一度も連れてきていませんし、家族のことを語ることもありません。
ですが、子供が生まれた7月あたりから、明らかに雰囲気や態度が穏やかになりました。マスコミには固くなりがちだった松山プロもやっぱり変わるものなんだと、つくづく思いましたね」(前出・舩越氏)
パパになって、パターが入らなくなったのでは話にならない。結婚して成績が落ちたとは、松山自身が絶対に言われたくないことだろう。その焦りもあるはず。日本で家族と過ごしたことで、リフレッシュできたと思いたい。
阿部氏はこう語る。
「いまは日本でゆっくりしているところですね。ただ、自分のやるべき練習はやっています。彼の気持ちの切り替えはたいしたものです。
家族との時間も大切にしながらも、プロゴルファーとして自分を最高の位置に持っていけるように日々過ごしていますよ。
結婚して、子供が生まれ、守るべき存在ができたことは彼にとって当然プラスになっています。口に出すタイプではありませんので、結果で示してくれると思います」
米国のスポーツ専門チャンネル「ESPN」のゴルフ担当記者、ボブ・ハリグ氏はこう期待する。
「たしかに最近のヒデキのゲームは、とりたてて感心するところがまったくなく、全体的に疲れている感じがする。技術的な細かいことを言う人もいるが、私はエネルギー切れが一番関係していると心から思う。
パッティングが彼の進化を妨げている要因であることは今も変わらない。だが、これを乗り越えれば、さらなるレベルアップが期待できる。ヒデキは非常に優れたプレーヤーだ。
4月のマスターズで彼が優勝できるかどうか、予想するのは難しいが、大会ではもっとも注目を集めることになると思う」