核から経済へシフトか?金正恩体制「若干の変化」が示すもの

米中はどうやらその出方を窺っている
津上 俊哉 プロフィール

フリーズ・フォア・フリーズ=双暫停では進まない

11月16日の中国外交部記者会見で、スポークスマンは改めて「フリーズ・フォア・フリーズ」(注:「双暫停」:北朝鮮は核ミサイル開発をこれ以上進めない代わり、米韓両国もこれ以上朝鮮半島周辺で軍事演習を行わない)の持論を持ち出して「これが現状では最も現実的、実施可能で合理的な案だ」と主張した。

しかし、それは歴訪から帰国した後、トランプ大統領が記者会見で「習主席と私はいわゆる「フリーズ・フォア・フリーズ」は受け容れないことで合意した」と述べたことへの反論だった。

スポークスマンは同時に、「双暫停は一歩目に過ぎず終点ではない、関係国がこの提案を真剣に検討してくれることを希望するが、同時にほかに平和的解決のための案があれば歓迎したい」とも述べた。

苦しい答弁だ。まるで「とにかく交渉のテーブルにつかないと、何も始まらないではないか」と訴えているようではないか。

 

北朝鮮が「ミサイルの飛距離や核弾頭の信頼性を検証する仕上げの実験は思い止まってもよい」と言えば、米国は改めて「それをやったら武力報復するまでだ」と切り返す……。「双暫停」はデファクトの恐怖の均衡としては、既に半分成立している。

問題は、それでは核ミサイル開発の歩みが止められないことだ。「双暫停」案の致命的欠陥はそこにある。「北朝鮮が核ミサイル開発をこれ以上進めない」ことを検証する手段がないのだ。中国国内にすら「検証手段も持たないで双暫停を提唱する外交部は無責任だ」という批判がある。

先の見通しが立たない

そう考えていくと、仮に北朝鮮が経済建設に軸足を移して制裁解除を求めたとしても、対話で平和的に解決する道を見出すのは容易でなさそうだ。結果はやはり膠着状態が続いていくことになるのだろうか。

そうなれば、これも9月4日の記事で触れたように、北朝鮮という体制の「素行」の良し悪しが展開を左右する鍵になるだろう。

恐れるのは、「対米抑止力を確保」したと認識した北朝鮮が「もはや恐れるものはない」とばかり、大量破壊兵器の拡散や非合法取引をやりたい放題になることだ。外貨獲得を困難にする国連安保理制裁が続いていれば、北朝鮮をいっそう危険な道に走りやすくするインセンティブが働く。

膠着状態が続いているが、「やりたい放題だけはぜったい許さない」と、中国が国境で睨みをどこまで利かせられるか、だけが頼みの綱になるのだろうか。

しかし、もともと北朝鮮と経済的にも民族的にも近しい中国遼寧省や吉林省などは、膠着状態が長期化したときに厳格な制裁を履行し続けられるのだろうか。「半年、一年の辛抱」ならともかく、先の見通せない無期限の交易禁止を本気で押しつければ、これら地域は経済構造を転換するための大がかりな補償政策を打ち出してくれと中央に求めるだろう。

9月の記事では「バカの壁」を打破するために、あえて「米中共同軍事作戦」の可能性を提起したが、やはり簡単ではなさそうだ。少なくとも習・トランプ会談で極秘裏にそんな検討を始めようといった流れになった形跡は全くない。

膠着状態が続く中、日本は石破茂元防衛大臣が示唆するように「非核三原則の見直し」といった新たな対応を目指すのだろうか。国内的にも強い抵抗が予想されるが、それはやらないとするなら、「北朝鮮の核ミサイルという新しい脅威に丸腰のまま晒され続ける」ことを覚悟しなければならなくなるのであるが。