歯を削ったら、認知症・心筋梗塞・がんのリスクが急増する

歯を削るのは、命を削ることと心得よ
週刊現代 プロフィール

歯を削る、抜くことによるリスクはほかにもある。口のなかにある700種類以上とも言われる様々な菌が、体内に流れ込んでしまうことだ。前出の小峰氏が語る。

「口内には非常に多くの細菌が生息しており、これが原因で病気が起きることがあります。抜歯した際にできた傷口から血管に細菌が入り込むと『菌血症』になる。

免疫がしっかりしていれば問題はありませんが、体力が落ちていたり高齢者だったりすると、血中の栄養で菌が増殖し、その刺激によって、動脈硬化を誘発、悪化させる物質が分泌される。

ひどい場合には、血管の内側が剥がれて詰まり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすこともあるのです。

40年近い臨床経験のなかで、抜歯を終えたすぐ後にこうした疾患にかかってしまった人を数えきれないほど見てきました。

たとえば、抜歯後に入れ歯を入れることになっていた患者さんが、1ヵ月ほど経っても来院しないので、電話をしてみたところ、ご家族から、本人は心筋梗塞が原因で亡くなったと言われたこともある。すでに動脈硬化や高血圧を患っている高齢者はとくに注意をしたほうがいい」

そもそも、心筋梗塞は、歯周病との関係が深い。

フィンランドのK・マイラ博士が発表した論文によれば、心筋梗塞の既往がある人々、健康な人々に、様々な角度から歯科検診を行ったところ、歯の状態のよくない人に急性心筋梗塞が多いことがわかった。

この結果について、歯の状態を良好に保てていない被験者は、血圧やコレステロール値など、ほかの心筋梗塞の要因についても数値が悪かったのではないかと疑う向きもあるかもしれない。

しかし、高脂血症、高血圧といったほかの「リスクファクター」を勘案しても、歯の状態と心筋梗塞には関係があった。

つまり、歯周病菌が心筋梗塞の発症に影響を与えていたということだ。この研究では、歯周病を持っている人のほうが、約3割も高い割合で心筋梗塞の発作を起こすことが明らかになっている。

歯周病菌は、ほかにも、心臓の弁の不調を来す「心臓弁膜症」や、脳梗塞を引き起こしうることも指摘されている。

近年になって大きな問題として認識され始めたのが、抜歯をした際にできる「ボーンキャビティ」という現象である。

「歯の根は、歯根膜という繊維によって歯槽骨とくっついています。抜歯時に、この歯根膜が残ってしまうと、歯槽骨はまだ歯の根が残っていると勘違いし、菌がたくさん付着した歯根膜を、そのまま包み込んでしまうのです。

このことをボーンキャビティといいます。この部分が細菌の温床となるのですが、『結合組織』という組織で包まれてしまうために白血球が到達しにくく、なかなか殺菌できない。その菌が全身にまわり、様々な疾患を引き起こすリスクがあるのです」(小峰氏)

驚くべきことに、この現象ががんにつながる可能性すらある。小峰氏が続ける。

「ボーンキャビティに溜まった細菌に対抗するために『顆粒球』と呼ばれる免疫細胞が増加するのに伴って、がんやウイルスに対抗する免疫細胞『リンパ球』が減少してしまう。

そのことで、がんが誘発されるのです。ボーンキャビティを治療したことで、がんが治ったという報告もなされています」

歯を削ることは、寿命を縮めるリスクがある。歯の治療をするときには、そのことを念頭においたほうがいい。

「週刊現代」2017年11月25日号より

関連記事