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歯を削ったら、認知症・心筋梗塞・がんのリスクが急増する

歯を削るのは、命を削ることと心得よ

脳が一気に老いる

「歯を削ったために、神経を抜いたり、抜歯をしたりしなければならなくなった場合、歯や口のなかに限らず、体全体の健康状態にも悪影響が出ることが近年の研究でわかってきました。

糖尿病、心血管疾患など様々な病気を引き起こす可能性があるのです」(天野歯科医院院長・天野聖志氏)

なかでも歯との関係が深いことで知られているのが、認知症である。小峰歯科医院理事長の小峰一雄氏が言う。

「歯と認知症には、深い関係があります。噛むという動作は脳の血流をよくし、記憶に関係する脳の部位『海馬』を活性化する働きがあることがわかっている。

つまり、噛み合わせが悪くなったり、噛む力が弱まったりすると、認知機能が低下する可能性が高いということ。最後までハッキリとした頭ですごすためにも、歯を健康に保つことは重要な要素なのです」

東北大学大学院歯学研究科の渡邉誠教授のグループが、70歳以上の高齢者を対象に、歯と認知症の関係について行った調査がある。

高齢者1167人を対象に、認知機能をスコア化し、同時に歯の本数を調べるという健康診断を行った。

結果、認知機能が「正常」と判断されたグループの人の残った歯の平均本数は、14.9本だった。一方、「認知症予備軍」と診断された人では13.2本、「認知症の疑いがある」とされた人では、わずか9.4本だけだったのである。

さらに、上の歯と下の歯の噛み合わせが悪く、上下が接している面積が小さい人ほど、脳のなかの、記憶や計算を司る部位が活性化していないことが、MRIの検査でわかっている。

その仕組みは、以下のように考えられている。ものを噛むと、歯と、歯を支えている歯槽骨の間にある「歯根膜」という膜を通して、食べ物の温かさや冷たさ、味などが、脳のなかで生命維持に必要な機能を持つ「視床下部」や、情動や本能などを司る「大脳辺縁系」などに伝わり、刺激する。

まさに、食べ物を噛み、味わうことが脳を活性化させているのだ。

歯を削り、抜くことになれば、日々の食事を噛みしめることができなくなる。脳への刺激は小さくなり、認知機能がみるみる低下していくことは必至だ。