「環島」自転車で台湾を一周して見えた、私のアイデンティティ

8泊9日、1000キロの旅
一青 妙 プロフィール

2015年末、全長約960kmの自転車専用環島道路「環島1号線」が開通した。おかげで、現在は、毎日約100人もの人々が、台湾のどこかを走りながら環島していると言われている。

写真:著者提供
写真:著者提供

『練習曲』の上映からちょうど10年。「環島」という概念はすっかり台湾で定着した。台湾人だけでなく、近頃は環島する外国人も増えてきた。

無事環島を終えた私は、閉会式で名前を呼ばれ、完走証とメダルを渡された。仲間の前で私がスピーチをする番になり、自然にこんな言葉が口から出てきた。

「環島之後,終於可以說我是真正的台灣人了!(環島をして、やっと自分が台湾人と思えるようになりました!)」

歓喜が全身を貫き、いつもよりかなり早口になっている。

父が亡くなり、台湾との縁が切れ、ずっと探し求めてきた私のなかの「台湾人」の空白の部分がやっと埋まった。完走したことで、自分への自信が確かなものになり、かけがえのない時間を過ごせたことに感謝の気持ちで一杯になる。そんな充実感で心が満たされた環島の旅だった。

環島を通し、私は、自分の育った台湾を「認識」し、台湾に対する郷土愛が生まれた。さらには、今度は母の祖国である日本についても、もっと知りたい、もっと正しく認識しなければならない、という思いが芽生えた。

環島という行為は、台湾人にとっても、日本人にとっても、原点回帰を意味する行為なのかもしれない。

 

このほど執筆した『「環島」ぐるっと台湾一周の旅』(東洋経済新報社)は、私の環島体験記を中心として書いた本だ。本書を手に取り、環島の魅力に触れていただき、台湾人が夢中になっている「環島」の存在を知ってもらいたい。いま台湾旅行ブームが起きているが、台湾旅行のフロンティアとして、環島という新しい台湾旅のスタイルを提案できればと考えている。

本書の出版の直前、実は私は2度目の環島を完走したばかりだ。さらにまた一歩、台湾人に近づけるよう、来年の目標は、「台湾人になるための儀式」の2つ目として、日月潭を泳いで渡ってみたい。

一青妙(ひとと・たえ)/エッセイスト・女優・歯科医。台湾屈指の名家「顔家」の長男だった父と日本人の母との間に生まれ、幼少期は台湾で過ごし、11歳から日本で暮らし始める。台南市親善大使などに任命され、家族や台湾をテーマにエッセイを執筆し、著書に『私の箱子』『ママ、ごはんまだ?』(ともに講談社)『わたしの台南』(新潮社)などがある。また、サイクリングを通じての日台交流に力を入れ、四国一周サイクリングPR大使もつとめる。最新作は自らの環島体験をもとに書いた『「環島」ぐるっと台湾一周の旅』(東洋経済新報社)。