これでは国を守れない!? 日本の情報セキュリティが遅れているワケ

なぜ?世界でできているのに…
神永 正博 プロフィール

この生き物の免疫系にあたる仕組みが暗号技術である。免疫系は自己と他者を識別する。生体内に入り込んだ非自己を排除するためだ。免疫系は脳と並んで生体内における最も複雑で精巧な仕組みである。

WPA2ですら大問題なのに、個々のIoTデバイスは容易に交換できない。ソフトウェアのアップデートさえできるとは限らない。これは大変な問題である。暗号なしにはインターネットで買い物をすることも、携帯電話で安心して通話することもできない。我々の体に免疫系がなければ、あっという間にウイルスや細菌の餌食になってしまうのと同じだ。

我々の体内で自己を規定しているのも脳ではなく、免疫系だ。今や暗号通貨ビットコインの技術が、金融ばかりかスマートコントラクト技術によって契約の世界をも支配しつつある。暗号理論が情報系の免疫系だと考えるなら、これは必然だ。契約の基礎は、自己と他者の区別だからである。つまり、情報社会における自己を規定するのは、暗号に他ならない。

暗号セキュリティがやられたら世界が終わりかねない。社会インフラの電子化が今後も進むなら、継続的な暗号人材育成と技術開発を避けられないだろう。

現代暗号入門』は、今まさに必要な暗号技術の全体像だ。本書を叩き台にして、応用・発展できるような人材が育ってほしいと願っている。