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1000冊読破して分かった「ホントに役立つ自己啓発書」の見抜き方

キーワードはエビデンスだった
高田 晋一 プロフィール

例を挙げてみましょう。

1万人以上の億万長者に調査をかけて、彼らがどうやって億万長者になったのかをまとめた『となりの億万長者』(トマス・J・スタンリー著・早川書房)。本書の中に、彼らの成功要因の1つとして、著者が「彼らは、ビジネス・チャンスをつかむのが上手だ」と主張している箇所があります。

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そしてこの主張の論拠となるエビデンスとして、

・1996年時点で(この書籍は1996年に出版されたものです)、全米で純資産100万ドル以上を所有する世帯は350万世帯で、その資産合計は全米個人資産合計の半分を占める
・2005年には、億万長者の世帯数は560万に達し、その資産合計は16兆3000億ドルになる見通し。全米個人資産の過半数が、1000万ドル以上の資産を持つ5.3%の人々に所有・支配されることになる

などを挙げています。

いかがでしょうか? データの古さもそうですが、上記のエビデンスは、「金持ちを対象とした仕事のビジネス・チャンスが拡大していく」ことの根拠にはなっても、「彼らお金持ちはビジネス・チャンスをつかむのが上手いから成功した」ことの根拠になっていないことがお分かりになるのではないかと思います。

もちろん、著者であるトマス・J・スタンリー教授はアメリカ富裕層研究の第一人者であるので、上記以外の(本書では割愛した)別のデータから上記を主張している可能性はあるでしょう。

しかしながらそのデータが明示されていない以上、「彼らは、ビジネス・チャンスをつかむのが上手だ」という主張が信頼できるのかどうか判断ができかねる、というのが私の率直な感想です。

最後は、自分で検証する

では、私たちはこうした自己啓発書とどのように付き合っていけば良いのでしょうか。

 

最初に示したようなチェックポイントを潜り抜けたような良書は、根拠となるエビデンスだけでなく、では明日から何をしたらいいのかという「具体的なTo Do」を提案してくれる本が多い傾向があります。

ですから、その根拠が明確に示されているものであれ、そうでもないものであれ、最後は自分の身体を使って本当に効果があるのかを検証する、という態度が最も健全な付き合い方と言えるのではないかと思います。

「統計的な確からしさ」と「自分にも当てはまるかどうか」は似ているようで全く異なるものです。

例えば、「毎日朝ごはんを食べている人1000人のうち、950人はその日1日体調がいいと答えた。一方で毎日朝ごはんを抜いている人1000人のうち、その日1日体調がいいと答えた人は200人に満たなかった」という統計データがあるとします。

このデータ自体は、「朝ごはんを食べている人の方が体調が良くなる」ことを示す、文句のないエビデンスとなっています。しかし統計データが示すのはあくまで傾向性としての確からしさだけであり、これがあなた自身に当てはまるかは別問題です。

もしかしたら、あなたは、「毎日朝ごはんを食べていても体調がいいとは思わなかった50人」に入るかもしれないですし、「朝ごはんを抜いても体調がいいという200人」に入るかもしれないわけです。
 
このように、私たちはなるべく信頼のおける本を選び、エビデンスがあるかないかというチェックをするだけではなく、最後は自分自身の手で検証する、という態度が最も重要です。ぜひ、こうした点に気をつけながら、信頼できる「自己啓発書」を楽しんでください。