中国共産党が「ネパール乗っ取り」を目論んでいるこれだけの証拠

多額の援助の裏にあるもの
長谷川 まり子 プロフィール

見え隠れする中国の思惑

前述の青蔵鉄道は、ネパール国境まで延伸され、将来的には国内にも通じるといわれている。加えて、ブータンやパキスタンなど、南アジア一帯に一大鉄道網を構築する計画も持ち上がっているとのことだ。

ネパールの民衆は「移動の便がよくなる」と、素直に喜んでいる。しかし、中国は親切心で列車を走らせてやろうと考えているわけではない。

近年、中国は貿易規模を飛躍的に拡大させている。なかでも海運貿易の割合が上昇を続けているのだが、輸送ルートに厳しい問題を抱えている。

インド洋と太平洋の間に位置するマラッカ海峡は、世界の3分の1の貨物貿易、約50%の石油輸送を担う国際貿易の重要ルートだ。中国の海上貿易においても、必ず使われるルートであり、全体の56%の原油もここを経由して運ばれている。ところが、可航幅が数キロしかない箇所があるうえに浅瀬が多く、航行に困難を伴うとされているのだ。

こうした不利な地理的条件だけでなく、もうひとつ厄介ごとを抱えている。国防を理由に、マラッカ海峡から北西に350キロ離れたアンダマン・ニコバル諸島の海域と空域で、インドが兵力を大幅に拡大しているのだ。

 

この夏、洞朗地域で2ヵ月間のにらみ合いが続いた中国とインド。そのような中印関係にあって、まさかの有事となればどうなるか。インド軍が中国船舶を遮ることも、中国艦隊を迎え撃つこともできるのだから、心中穏やかでいられるはずもない。

ゆえに、南アジアを網羅する鉄道計画なのだ。航行困難かつインド軍が目を光らせる海運ルートに全面的に頼らずとも、貨物貿易や石油輸送を担う陸運ルートを確保しようという魂胆なのである。

中国による内政干渉

鉄道整備から医療衛生、教育文化や文物古跡の修復など、さまざまな分野でネパール支援を行う中国。ネパール国民の評価は高まる一方だが、黙ってカネだけ出す者は稀有な存在であり、払った分だけ口を出すのが世の常である。

ゆえに、これまでネパールに対してほとんど物申すことがなかった中国だが、最近、なにかと干渉してくるという。しかも、国政に関わる一大事にまで介入しているというのだ。

前出のビシュヌ記者がいう。

「11月26日と12月7日の2日間にわたって、ネパール連邦議会選挙が行われます。それに向けて、議会第2党のUMLと議会第3党のマオイストは、ともに戦うと発表しました。ほかの共産党系諸党にも参加を呼びかけています。

そして選挙後は、2党が合併し、新たな共産党に生まれ変わるといっています。現在、UMLは野党で、マオイストは与党。そんな2党が、なぜ手を結ぶことになったのかといえば、中国が仕組んだといわれています。UMLとマオイストの候補者に、中国が選挙資金を提供し、コントロールしているのです」

10年に及ぶ反政府活動を経て、政権に加わったマオイスト。2008年、UMLやマデシ人権フォーラムなどと連立し、書記長・プラチャンダ首相を首班とする連立内閣が成立。この頃から、中ネ両国の親密さが増し始めた(写真:著者提供)

新生共産党のスローガンは、「社会主義志向の繁栄とナショナリズム」とのことだ。もともと共産党系は親中的ではあったものの、来る選挙で彼らが圧勝すれば、中国の傀儡政権が誕生しかねないのである。

こうした世の流れを、ネパールのもうひとつの隣国であるインドはどう捉えているのか。

次号は、彼らの対中戦略について記したい。

年間7千人ものネパール人少女が人身売買され、その半数以上がHIVに感染し、死と向かい合っている…被害者たちと共に歩んだ日本人ボランティア10年間の全記録。2008年新潮ドキュメント賞受賞作品に最新情報を加筆して文庫化!

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