16歳の子の親の9割が「恋人の宿泊OK」

学校だけではなく、家庭環境もオランダの子供たちの性教育にとって重要なキーワードになってくる。家族間での性に対してオープンな態度が子供たちに安心感を与えているといわれている。

アメリカの「国立生物工学情報センター」(NCBI)で閲覧できる記事によると、10代の若者の性的健康にとって「暖かい家族環境」を持つことが重要であるという研究結果報告があるという。両親の愛情と支えを受けたティーンエイジャーは、「セックス経験が少なく、性交渉相手との交渉力が強く、避妊薬をよく使い、セックスを余儀なくされることは少ない」のだとか。

前述の「25歳以下のセックス」2017年度版にも「14歳までに性交経験のある子ども」は、「親とセクシャリティに関する話をする時間が少ない」「自分の意思からではなく、誰かのために性交する」という考察があったので、それを逆説的に裏付けていると言えるだろう。

オランダの親たちが本格的に性教育を考え始めるのは、子供が10歳をすぎてからが多いようだ。9歳の娘の同級生家族にも聞いてみたけれど、まだ具体的に家で何かを始めている人は見つからなかった。ティーンエイジャーの子供がいる母親に聞いてみると、「過去の取り組み」を教えてくれた。

「子供たちが初等教育の頃は、絵本などを使って妊娠のシステムを教えた程度。具体的にセックスについて話し始めたのは中等教育(12歳から)に入った後ね」

小学生のときに妊娠のシステムを、中学生になったら具体的なセックスについて親が教える? セックスの話がタブー視されている日本では、なかなかないことだろう。ちなみにこの友人が使ったのは「It's So Amazing!」という児童書のオランダ語版。7歳から10歳が読者対象だ。

2004年というやや古い調査ではあるが、同じく「国立生物工学情報センター」内の記事によれば、16歳の子供を持つオランダ人の親の9割が(仮の想定として)「家に泊まりに来た子供の恋人が子供と同じ寝室に泊まることを許容する」というデータもある。これは、親が子供を信頼するのはもちろんのこと、子供のほうも親を信頼していないとできないことだ。

そういうオープンな家庭を羨ましく思いつつも、オランダの家庭もこういった雰囲気を一朝一夕に築き上げたわけではないことは想像に難くない。

オランダでは父親も母親も平等に、子育てに積極的に関わっている。朝と午後の学校の送迎の半分近くは父親が来ている。例え父親と母親が離婚しても、両家が近くに住み、子供の学校行事に元夫婦がそろって出席することだって決して珍しくはないのだ。両親ともに努力して子育てにかかわる姿は、日本で生まれ育った筆者の目には非常に眩しく映る。

とはいえ、オランダの家庭でセックスの話をオープンにできるのも、学校で性教育が盛んだったり、子供向け博物館でそんな展示があったりと、「セックス=タブーではない」という空気があるからでもある。セックスが隠されたことゆえにきちんとした知識のないままに性交し、中絶に苦しむ10代の日本人女性も少なくなく、日本でも性教育の改革が問われている。

鶏が先か卵が先かではないが、学校での性教育と、家庭での性教育、どちらも真剣に考えなければならない局面にあるのかもしれない。

筆者においては、学校で始まるであろう性教育に向けて、オランダ人の友人のように、子供に妊娠の仕組みなどを教えてあげるための本などをそろえていくつもりだ。そして子供と、性の話を語り合えるような関係を築き上げていきたいと思う。