乳児虐待の疑いで逮捕された母の、悲痛な叫び

「揺さぶられっこ症候群」を問う➀
柳原 三佳 プロフィール

ネットリンチに遭う

実際に、インターネットで彼女の実名を検索すると、逮捕時に報じられた次のようなニュース記事が次々と出てくる。

<『生後1カ月長女に暴行、意識不明 殺人未遂容疑で逮捕の母親 「2歳半の長男がやった」と供述』

生後1カ月の長女に暴行して殺害を図り、頭蓋骨骨折などで重体にさせたとして、大阪府警捜査1課などは16日、殺人未遂容疑で、母親で大阪市***の無職、****容疑者(34)を逮捕した。「(2歳半の)長男がやったとしか言えない」などと容疑を否認しているという。

逮捕容疑は昨年11月10日から12月18日ごろの間、自宅マンションで、長女に何らかの暴行を加え、殺害しようとしたとしている。長女は意識不明の重体で病院に搬送されたが、現在も意識が戻らず入院中で、てんかんなどの完治不能の後遺症もあるという。

府警によると、同年12月18日午後6時ごろ、**容疑者が「長男が娘を床に落としてから、反応がなくなり、ぐったりしている」と119番。府警が調べたところ、長女は頭の2カ所が骨折しており、ほかにも頭部を揺さぶられた形跡があった。

**容疑者は当日の状況について、府警の任意聴取に「長男に長女を抱っこさせて片付けをしていたら、ドスンと音が聞こえた」などと説明していた。
以上、産経新聞2015年9月16日付より。****は実名報道)>

警察からの事前リークがあったのだろう、各メディアは京子さんに手錠がかけられる前から自宅周辺に張り込んでカメラを回し、逮捕後は隠し撮りしていた京子さん本人の映像を流して、彼女が虐待で生まれて間もない我が子を殺そうとした「犯人」であるという報道を、実名で大々的に行っていた(当時のテレビニュースも動画でアップされている)。

 

現在も公判中であるため、有罪と決まったわけではない。にもかかわず、逮捕、起訴された段階で、京子さんへの批判は過激さを増し、第三者の私が見ても背筋が凍りつくような過激な言葉がこれでもかと書き込まれている。ネット上ではすでに有罪判決が下されているのも同然だった。

それでも京子さんは、真剣なまなざしでこう語る。

「当初から児童相談所は、私が長女を放り投げて虐待したと決めつけ、警察に報告していたようです。そして、私が嘘をついて、当時2歳半だった長男に自分の罪をなすりつけていると……。私にとって長男は、何ものにも代えられない大切な存在です。どうして、嘘をついてこの子のせいにするでしょう。嘘をつくなら、もっとまともな嘘をつきます。

もちろん、長女が大怪我をしたことについて、私に責任がなかったとは言いません。振り返ってみれば、あのときこうしておけば、ああしておけば、と後悔することがたくさんあります。長女には本当に申し訳ないとしか言えません。でも、どうして生まれたばかりの我が子に殺意を抱く必要があるんですか?

また、長女の入院と同時に、2歳半の長男まで児童相談所に一方的に連れて行かれてしまい、本当につらい思いをしました。おそらく、当初から私が長男や長女を虐待していると疑われていたのでしょう。一番甘えたい時期に親から引き離されてしまったのです。

私たちは長男があまりの寂しさに、愛着障害を負ってしまうのではないかと、とても心配しました。

結果的に私たち夫婦は、長女だけでなく、一時的に長男まで奪われ、家族はバラバラになってしまいました。親として身を切られる思いでした。繰り返しますが、私が長女を放り投げたことだけは、絶対にありません」

取材中も長男をあやす二人。筆者には彼女たちが虐待をするとは思えなかった

私はこれまで冤罪事件を多数取材し、無罪を訴える当事者については、全て実名で報じてきた。しかし、京子さんに直接会って話を聞き、長男のAくんが大人になったときのことを配慮する井川さん夫妻の考えを尊重し、現時点ではあえて仮名での執筆を選択した。ご了承いただきたい。