ところで近年、中華圏の各国では慰安婦ドキュメンタリー映画がブームである。すなわち、今年夏に中国で公開されて興行収入1億7000万元(約29億円)以上を叩き出した『二十二』(監督:郭柯、2017年中国)、一昨年夏に台湾で公開されてスマッシュヒットを記録した『蘆葦之歌』(監督:呉秀菁、2015年台湾)などだ。
実はこちらの分野でも、カナダ華人は存在感を発揮している。中国人・朝鮮人・フィリピン人の元慰安婦に取材した『THE APOLOGY』というドキュメンタリー映画(2016年カナダ)が制作されているのだ。
『THE APOLOGY』の監督は、トロント市内で活動するティファニー・ション(Tiffany Hsiung、熊邦琳)氏という台湾系の華人女性。映画製作はやはりALPHAが全面的にバックアップしている。
カナダ華人のニュースサイト『365netTV』によれば、そもそも映画が作られた契機からして、2009年にジョセフ・ウォン氏がティファニー監督を引率する形で中国と韓国を訪問して「歴史の真実」を教えてあげたことにあるらしい。
今年8月、台北で開かれた「慰安婦国際人権映画祭」では、上記の『二十二』『蘆葦之歌』『THE APOLOGY』という中国・台湾・カナダの3大慰安婦映画が上映され、さらに各作品の監督の座談会も開催されている。
従来はもっぱら「韓国」のイメージが強かった慰安婦問題だが、近年は中華圏においても南京大虐殺に続く新たなホットトピックとして注目を集めるようになっている。
香港出身の大物慈善活動家・ジョセフ氏とその愛弟子たちが生み出した、対日歴史問題強硬派のビッグウェーブ。今年になってオンタリオ州で南京大虐殺記念日が制定されたのは、なにも突如として起きた話ではなく、彼らの20年以上にわたる地道な宣伝活動とロビー活動の賜物であったわけなのだ。