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「変態に自信が持てました」奥手な官能小説家が淫した異常な世界

常識の枠を取り払ってくれた10冊

コンプレックスから解放された

職業柄、早熟で経験豊富と思われがちですが、私の初体験は19歳、相手はソープ嬢でした。

読書体験も奥手です。というのも父親が厳しい人で、20歳までは、きちんとした文学を読まなければならないと言って、大衆小説や漫画を読ませてくれませんでした。

だから、小学生の時は夏目漱石や川端康成の小説、野口英世、エジソンの伝記、少年推理小説などを読んでいましたね。

中学生になると、さすがに性欲にともなう好奇心を抑え難く、SM雑誌の『奇譚クラブ』をこっそり買って読むようになり、『家畜人ヤプー』の存在を知りました。

実際に作品を読んだのは高校3年生のときです。その頃住んでいた藤沢の家の近くの本屋で見つけて買い、読み始めたらとまらなくなった。

2000年後の世界では、日本人が白人の家畜になり、工場で便器や椅子に作り変えられ、生体家具として使用されるというショッキングなストーリーでしたが、SMがSF小説で展開されていて、わくわくしたり欲情したりと忙しく、朝まで一睡もできませんでした。

当時のSMは女性を縛って叩いて蝋燭で責める、のワンパターンで、つまらなかった。もっとメンタルな部分があるはずだと思っていたので、型にはまらない想像力の広がりに感銘を受けました。自由にどんどん発想していいんだと解放された気分でしたね。

2位の『アブノーマル』はもともと『異常愛』というタイトルで立風書房から単行本が出ていて、それで読みました。やはり高校3年生のときです。

 

この本はあらゆる性行為の嗜好をまず3種に大別し、それをさらに24種に分類、分析しています。

私は小学生の頃から、クラスメイトの女子の上履きの匂いを嗅いだり、鼻をかんだチリ紙を拾ったりしていて、自分は異常者だという引け目が強かったんです。

ところがこの本には、「変態とは性的少数派である」と書いてある。なるほど、それなら自分は選ばれた人間なのだと、誇りを持てました。

また私の性的嗜好が、「フェティシズム」だということも分かり、病名を教えられた患者のようにほっとしましたね。この本は暗いじめじめとした私の欲望に光を当ててくれたわけです。

小説の世界に耽溺した

三島由紀夫が割腹自殺をしたのは、私が中学3年生の時でした。子供心に衝撃を受け、事件をきっかけに彼の小説を読み耽りました。

天人五衰』は、三島の最後の長編小説『豊饒の海』の完結編です。シリーズは4巻あって、1巻目の主人公が次の巻の主人公に輪廻転生していきます。

高校3年生から20歳にかけて、順番に読み、時間の枠を超えた世界に耽溺しました。終わってしまうのが惜しかった。

父親の言いつけを律義に守ったわけでもないのですが、エンターテインメント系の小説を積極的に読み始めたのは20歳以降です。