自治体が「地方創生」をガンバると、「人口減少」が加速する

もう、手を引いたほうがいい
今井 照 プロフィール

結局、国庫の負債として残る

会計検査院に効果検証を求められた内閣府は、自治体へのアンケートを取りまとめ、報告書を作っています。

その結果、「商品券があったから買い物をした」といった「新規消費喚起額」が3391億円。そこから国が拠出した交付金(2372億円)を差し引いて、実質的な消費喚起額は1019億円だったとしました。

ただし、内閣府が自ら認めているように、この推計には将来的な消費が前倒しされた結果、いわゆる「先食い」効果などが含まれています。もし「先食い」以外に効果があるとしたら、それは生活に余裕のある高額所得者層が「商品券があったから買い物をした」ということでしょう。

私たちはこの「成果」をどのように評価するべきなのか。ポイントは、国が出したお金が最終的に誰のふところに収まり、誰の負担として残るのか、ということです。

自治体ごとの効果検証は、事業の当事者とも言える商工会議所などに委託して行われたうえ、ご丁寧なことに、多くの場合その費用も国からの交付金で賄われました。また、半額旅行券については、旅行会社などに事業が委託されている。こうした事務経費は、事業費総額の約2割にあたる525億円余りにのぼります。

さらに、これらの事業によって得られる「儲け」は、高額所得者層のほかに東京の大手資本を含む商業者や旅行業界に還元されることになります。その一方で、事業に要した多額の公金は、国庫の負債として積み上がり、そのほとんどが国民全体の負担として残るのです。

 

目的を喪失した「地方創生」

今日にいたるまで、毎年のように名称を変えつつ、地方創生関連の交付金事業が続けられています。しかし、国に採択された事業名を見ると、これが「地方創生」なの、と思うようなことがほとんどです。つまり実態としては、予算名目がつけ替えられたにすぎないことがわかります。

たとえば、2016年度の「地方創生拠点整備交付金」(900億円)は、観光施設の改修や6次産業化(=農林漁業者が、食品加工、流通・販売にも取り組み、農林水産業を活性化させる取り組み)施設の整備などを名目としつつ、実際には、道路、汚水処理施設、港湾の整備改修といった公共事業が含まれています。

また、内閣改造がくり返されるうち、もはや地方創生担当大臣が存在しているのかどうかもわからなくなってしまった。現在は、まち・ひと・しごと創生担当、行政改革担当、国家公務員制度担当の三つを兼務する大臣として、梶山弘志氏が任命されていますが、いったいどれだけの人たちが知っているでしょうか

こんな現状なので、政府が地方創生にどれだけ力を入れているのか、もはや外からは見えにくい。それでも、一度決まってしまうと、毎年お金はばら撒かれるのです。

しかし、本来自治体にとっては、使途を制限された交付金ではなく、一般の予算として国から配られたほうが、それぞれの地域にとってより切実な問題を解決するために予算を執行できます。そして当然ながら、そのほうが地域の住民にとっても、満足度の高いお金の使い方になるはずです。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/