過去形で「森友問題とは何だったのか?」と問うと訪れる恐ろしい未来

そこに待ち受ける「教育の未来像」
大前 治 プロフィール

「忖度」ではなく「働きかけ」

2ヵ月後の2015年11月、昭恵氏の秘書だった谷査恵子氏(現・在イタリア大使館一等書記官)が、籠池氏にFAXを送信した。内容は、籠池氏の依頼を受けて財務省に土地の対価の値下げを「照会」したことの報告である。

そこには、財務省は籠池氏の要望には応えられないようだが、「当方(安倍昭恵)としても見守りたい」「何かございましたらご教示ください」「昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」とある。今後も協力しますというメッセージである。

財務省からみれば、ただの「照会」ではない。「森友学園への便宜を求める安倍昭恵氏の意向」が明確に示されたことになる。財務省側が自発的に「忖度」したのではない。影響力を承知のうえで財務省へ「働きかけ」をしているのである。

その後、2016年6月に、森友学園は国有地の払下げを受けた。鑑定額より8億円以上の値引きに加えて廃棄物撤去費も相殺され、実質200万円で8,770平方メートルの土地を購入できた。

不可解な点は数多い。競争入札ではなく随意契約とされた点、随意契約なのに複数の見積りを取得していない点、土中の廃棄物撤去について実地確認されなかった点など、あり得ない事態が連なっている。

国有地の代金支払が完了していないのに売却関係書類が「すべて廃棄された」という佐川宣寿・財務省理財局長(後に国税庁長官に昇進)の説明も不自然である。

これら全てが組み合わさって、問題だらけの小学校設置が後押しされた。政治家の関与なしに、籠池氏1人の力では実現不可能である。

 

互いに利用し合った籠池氏と政治家

巨額の賄賂が授受された訳でもなく、加計学園のように首相の親友だから優遇された訳でもない。なぜ森友学園の小学校建設は後押しされたのだろうか。

松井氏が府知事に初当選した3ヵ月後の2012年2月26日、大阪市内で教育再生機構が主催する教育シンポジウムに安倍氏と松井氏が登壇した。意気投合した2人は、居酒屋へ場を移して教育談義に盛り上がった。

その1ヵ月半後、大阪府は森友学園の要請を受けて学校設置基準を緩和した。それが出発点といえる。

第一次安倍政権下で教育基本法を改正し、「愛国心」を教育の根幹に据えようと提唱してきた安倍首相にとって、「教育勅語」を毎日暗唱させる森友学園の教育方針は素晴らしいものと映ったに違いない。

国家主義・軍国主義的な教育を実践する先進校を大阪に開設し、これを全国へ広げていくことは、安倍氏の政治目標の実現に合致する。森友学園は政治的な利用価値があったのである。

他方で、この目標実現のためには学校設置を認可する大阪府の松井知事の協力が不可欠であった。

改憲のために維新の協力が必要だった安倍氏と、「大阪都構想」のために安倍政権の協力が必要だった松井氏、それぞれの思惑もあったのであろう。

籠池氏は、安倍首相に気に入られる教育方針を実践し、政治力を味方に付けて国有地の安価な払下げを受けることに成功した。幼稚園児に政治的フレーズを叫ばせたのは、政治家を利用するためだったのである。

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