『陸王』の専務役で存在感 俳優・志賀廣太郎「脇役の流儀」

真面目な小市民を演じたら日本一 
週刊現代 プロフィール

一人居酒屋が至福の時間

志賀は46歳のとき、アップルコンピューターのCMに出演して、注目を集めた。それを契機として、オファーが増え続け、'00年代に入り、引っ張りダコの名脇役となった。

大学で演劇を体系的に学び、海外留学、演劇講師、劇団員のキャリアがある。それを土台に、深みのある声で「真面目な小市民」を巧みに演じるのだ。

 

その一方で、ふだんの志賀はマイペースを貫く。

志賀のマネジャーである牧内彰氏が明かす。

「役作りに悩む姿を見たことがありません。本番直前までいつものまま。スマホでゲームをしていることもあります。本番のときに初めてスイッチが入るって感じでしょうか。それどころか、撮影中もふだんと変わっていないと思ってしまうことさえありますね。

志賀さんの言葉で印象に残っているのは、『明日できることは明日やる』だったかな。

基本的に仕事は選びませんし、お酒とお風呂が好きな良い意味で普通の人です。電車に乗っていても気づかれることが少ないですね」

いまも週1コマ、大学で授業を行い、電車の中で台本の表紙を隠して、セリフを覚える。楽しみは一人でフラリと居酒屋やバーに行くこと。行きつけの居酒屋、世田谷区の祖師谷大蔵にある「サクラ」の店主・勝木美子さんが目を細める。

「いつも夕方6時ごろから、遅いと終電間際までいらっしゃいます。テレビを見たり、若いバイトの女の子と世間話をしたり。テレビは『なんでも鑑定団』が好きですね」

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この自然体こそが、志賀の演技を支えている。最後に志賀は自身の演技論についてこう語った。

「どんな作品においても、過剰な演技はせずに、その人物がそこにいて自然に見えるようにしているだけです。大学で学んだ観世銕之丞さんの教えは『自分を客観的に見ろ』というものでした。世阿弥の伝書にある『離見の見』ですね。演じながら演出家としての目線も持つようには意識しています。

演技論なんて特にありませんね。スマホ?本番前のゲームは気分転換ですね。あとはゲームをやったあともセリフが入っているかなって。ちゃんと覚えているかの確認作業でもあるんです」

40代で離婚して、いまは気ままな一人暮らしを楽しむ。来年で70歳。一人で静かに呑む時間を大切にしながら、これからも彼はじんわりと視聴者を楽しませる――。