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外国人にも人気の「廃墟」は産業遺産か、心霊スポットか…

その「価値」を分けるもの
岡本 亮輔 プロフィール

遺産の価値を決めるもの

軍艦島を研究した社会学者・木村至聖が指摘するように、産業遺産の難しさは、その価値が自明でない点にある。

軍艦島は、エネルギー政策の転換という国家レベルの決定によって、たった3ヵ月で無人になった。

その後、30年間はまさに廃墟であったわけだが、今度はそこが廃墟マニアの聖地として祀りあげられ、ついには世界遺産登録された(『産業遺産の記憶と表象』)。

このプロセスで重要なのは、元島民などが中心となって、戦後復興の原動力となった島で暮らした人々の生活を後世に伝えようという動きが生じたことだ。

この運動が奏功したことで、軍艦島は一部のマニアのための場所から、近代日本の産業遺産へとその価値を高めたわけである。

〔PHOTO〕gettyimages

廃墟観光の対象となる場所を検索すると、しばしば予測検索ワードに「心霊スポット」「怪談」などと出てくる。

こうした場所は、まだ意味を与えられていないと言ってよい。朽ちた物だけが残されており、ただ不気味な雰囲気だけが消費されているのだ。

その場所が近代化において果たした役割といった物語が与えられなければ、産業遺産は成立しない。

そして産業遺産の成立には、廃墟の遺産化に主体的に関わろうとする人々や組織の存在が不可欠だ。

 

冒頭で紹介した旧摩耶観光ホテルについては、今年の夏、NPOが中心となってクラウドファウンディングで資金集めがなされ、建物を登録有形文化財に登録する運動が本格化している。

北海道の炭鉱遺産についても、NPOやアートプロジェクトが立ち上げられ、その保存と活用が模索されている。

廃墟化する産業遺産の意味は地域外の人々には分かりにくい。その場所や施設が持つ歴史的な重要性や意味が、地域の人々によって発見され、外部へと発信されなければならない。

考えてみれば、ローマのコロッセオも日本の城郭も、本質的には廃墟ツーリズムだ。物にどのような意味を与え、それをいかに伝えていくのかが遺産の価値を決めるのである。