東京新聞・望月衣塑子が『新聞記者』を書いた理由

危害が加えられる可能性もあるけれど…
望月 衣塑子

―望月さんは、千葉や横浜などの支局時代や、日歯連事件、防衛省の武器輸出問題でも、スクープを飛ばした現場派。それゆえ、整理部に異動になった際は、現場への気持ちから他媒体への転職を真剣に考えたとか。

一度は読売新聞への移籍を決めました。今の私からすると、「こちらと向こう」な政権寄りの新聞社。けれど、もともと私は政治に関心が薄くて、各社ごとの主張の違いに疎かったんです。

社会部にいると、大事なのはネタをいかに抜くか。夜討ち朝駆けが苦にならないタイプの私からすると、読売さんの取材力はピカイチで敬意を抱いていました。でも、転職を後押ししてほしくて父に相談したところ、「読売は止めてくれ」と言われてしまった。父は業界紙の記者をしていたマスコミ人で、思うところがあったみたいです。

 

そんなこんなで、結局、東京新聞に残ることになりました。今は、自由にやらせてくれる社風をありがたく思っています。

―本書では、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの取材をもとに、山口敬之・元TBS記者の準強姦容疑について、捜査の過程や、マスコミ報道への疑問を呈されています。

どうして、中村格刑事部長(当時)は逮捕状の執行を止めたのか、疑問が尽きません。私の取材は際限がないので、「望月はネジが一本ない」とも言われます。でも、納得できないものは納得できない。詩織さんと同じように苦しみながら、声を上げられない人はたくさんいます。記者としてそんなマイノリティの声を社会に問いかけたいんです。

―これからも、質問を続けていくんですね。

安倍自民党の一強が続く中で、驕りや歪みが政権の中枢部に生じています。いくら質問しても、菅さんには核心から逃げられますけど、質問し続けることで、真実に迫る効果はあると思います。

政治家や政治部の記者が言う「禊は済んだ」という感覚が、私はわからないんです。同じマスコミの番記者や若手に睨まれつつ、一歩踏み込んだ質問を投げかけていきたいですね。

(取材・文/伊藤達也)

『週刊現代』2017年11月18日号より