核実験を繰りかえすあの国に、Kちゃんは住んでいる。

最相葉月が描く北朝鮮の友、中国朝鮮族の友
最相 葉月 プロフィール

朝鮮族とはどういう民族なのか

恩恵は黒竜江省ハルビン出身の朝鮮族でした。中国にいる55の少数民族の中の一つで、漢族と、その次に人口の多いチワン族以外には「一人っ子政策」が免除されているため彼女にはきょうだいがいます。3人姉妹の末っ子で、一家の期待を背負って日本にやってきました。日本語学校に通いながらアルバイトをかけ持ちして実家に仕送りをし、大学を目指しました。いつも聖書を携帯し、どんなに忙しくても日曜には必ず教会に通っていました。

私は彼女のことをまったく知りませんでした。もちろん、今書いたような表面的なプロフィールは知っています。ですが、それ以上深く、知ろうとはしませんでした。

朝鮮族がどういう民族なのか、なぜ朝鮮族の学校では日本語を学ぶ環境があったのか、なぜキリスト教徒で、地下教会とは何なのか、家族はどんな人たちで、どんな家に住んでいるのか。毎週顔を合わせているというのに、関心を持とうとしませんでした。彼女が就職してわが家に定期的に来ることがなくなってからは、数か月に一度、顔を合わす程度になっていました。

来日から10年が経ち、彼女が帰国するといったとき、突然、彼女のことを自分が何も知らないことに気がつきました。この人はいったい何者なのか。彼女が作業してくれていた机と椅子を見つめながら、私はしばらく呆然としました。

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わかり合うとは、互いの違いを知ることです。相違は相違として受け止め、相手の立場を尊重しながら手探りで歩み寄ることです。そんなわかったようなことをいいながら、自分はどうなのか。目の前の一人の中国人のことすらよく知らない。いや、これまで知ろうとすらしなかったではないか。その無関心は、ふだん苦々しく思っている一部の人々の偏見や差別的言動と、実は紙一重ではないのか。

 

私は彼女の帰国に合わせて、一緒に実家に連れていってほしい、家族に合わせてほしい、そして、あなたのことを書かせてくれないかと頼みました。これまで彼女について書くなどと考えたことはありませんでしたが、私の仕事を理解している彼女は、「いいですよ」と了承してくれました。自分にとってもルーツを知るいい機会だといいました。

私たちは一緒に歩き回りました。来日してからこれまでに住んだアパートや、アルバイトをした居酒屋、就職した会社。彼女がそこでどんな経験をし、何を見、どんな想いをしたのかを訊ねました。中国で反日デモが起こるたび、なんの関係もない彼女が職場で嫌がらせを受けていたことも知りました。